1型糖尿病のハネムーンピリオドについて

ハネムーンピリオドとは何か?──1型糖尿病における一時的な安定期

1型糖尿病は自己免疫により膵臓のインスリンを作るβ細胞が破壊され、インスリン分泌が著しく低下する疾患です。しかし、診断直後にインスリン治療を開始すると、一時的に膵臓のβ細胞機能が回復したかのように、インスリンの必要量が減少したり、血糖値が安定することがあります。この現象を"ハネムーンピリオド(Honeymoon Period)"と呼びます。

この期間は数週間から数ヶ月、場合によっては1年ほど続くこともあります(S. Oram et al., Diabetologia, 2014)。

特徴

  • インスリン分泌が一時的に回復

  • 血糖コントロールが良好になる

  • インスリンの必要量が減少する、または一時的に不要となる

なぜ起こるのか?──免疫反応とβ細胞の一時的保護

ハネムーンピリオドの正確なメカニズムは未解明ですが、以下の要素が影響していると考えられています。

  • 高血糖の改善によるβ細胞の疲弊回復:インスリン治療開始によって、過剰な血糖負荷が減少し、一部のβ細胞が機能を一時的に回復する。

  • 自己免疫反応の一時的沈静化:治療初期に免疫応答が緩和することで、β細胞が一時的に保護される可能性。

  • 炎症の抑制:血糖正常化により炎症性サイトカインが低下することも関与(Lehuen et al., Nat Rev Immunol, 2010)。

ハネムーン期の意義と注意点──過信は禁物

ハネムーン期は患者や家族にとって喜ばしい時期ですが、以下の点に注意が必要です。

誤解されやすいポイント

  • 「治った」と思われること:一時的な改善であって、自己免疫の進行は続いています。

  • インスリン中止による悪化:油断すると血糖コントロールが崩れ、ケトアシドーシスのリスクも高まります。

  • 定期的なCペプチドやHbA1c測定が必要:β細胞機能を評価し、適切な治療の維持が重要。

学会ガイドラインと最新の研究動向

学会ガイドライン(日本糖尿病学会・ADA)

  • ハネムーン期であっても、低用量のインスリン治療は継続すべきと推奨

  • 血糖自己測定(SMBG)や持続血糖モニタリング(CGM)の活用が重要

最新の研究

  • ITP(Immune Tolerance Protocol)などの免疫調整治療が注目:免疫抑制剤を使ってハネムーン期間を延長する試み(Herold KC et al., N Engl J Med, 2019)

  • **テプレズマブ(teplizumab)**による1型糖尿病の進行遅延も臨床研究で成果(N Engl J Med, 2019)

当院でのサポート

 

当院では、1型糖尿病とそのハネムーンピリオドにおいて、以下のようなきめ細やかな支援を行っています。

1. 個別の血糖モニタリングと指導

  • CGMやLibreを用いたリアルタイム血糖管理

  • 患者のライフスタイルに応じた指導

2. 免疫療法を見据えた最新知識の提供

  • 新薬の臨床試験やガイドラインに基づいた情報提供

  • 小児〜成人までの継続的ケア

3. 心理的支援

  • 小児患者や保護者への精神的ケアも充実

  • 必要に応じて心理士・精神科とも連携

4. 教育と啓発

  • YouTubeやパンフレットでのわかりやすい疾患解説

  • ハネムーン期への正しい理解を促進


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada) 医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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