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糖尿病・甲状腺について(2) 

糖尿病の研究打ち合わせのために台湾に来ました。このプロジェクトは日本と台湾、米国の糖尿病内分泌専門医の国際共同研究です。膨大な医療ビックデータから個別化医療や標準化治療に役立つ知見を探索しています。平池勇雄先生、Chia-lin Lee先生、原一雄先生、いつもどうもありがとうございます! 以下は最近報告したものです。 【台湾バイオバンクの大規模データを用いた遺伝子環境交互作用研究】 肥満を含む生活習慣病は遺伝因子と環境因子の双方の影響によって発症し、遺伝因子は肥満の指標であるBMIの約40%を説明します。ゲノムワイド関連解析によってこれまでに数百の肥満感受性SNPが報告されていますが、FTO遺伝子の近傍に位置するSNPは頻度の高い肥満感受性SNPとしては最大のeffect sizeを有しており、またこのSNPのrisk alleleは褐色脂肪細胞の機能を負に制御することが報告されています。私たちは台湾バイオバンク約2万人のデータを用いて、FTO領域の肥満感受性SNP rs1421085の遺伝子型と定期的な運動習慣(なし、≦20Mets/週、>20Mets/週の3郡)の有無の間に、追跡期間中の体重やBMIの増加に対する遺伝子交互作用が存在することを明らかにしました。すなわち肥満感受性遺伝子のrisk alleleを有する被験者であっても、定期的な運動習慣によって追跡期間中の体重増加が抑制されました。さらにベースラインで定期的な運動習慣がないと回答した被検者に注目したサブグループ解析を実施し、ベースラインで定期的な運動習慣がなかったとしても、追跡期間中に運動習慣を獲得することでrisk allete保有者の体重増加が抑制されることを同定しました。re1421085に関する限り、遺伝的に肥満リスクが高いほど運動習慣による体重増加の抑制効果も高いと解釈できる結果となり、今後の個別化医療に役立つ可能性が示唆されました。 詳しくは、 JCEM 2021;106:e3673
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