甲状腺疾患とは? 〜薬物治療の前提となる理解〜

甲状腺は、のどの前面にある小さな内分泌器官で、全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモン(T3およびT4)を分泌しています。このホルモンが多すぎる、あるいは少なすぎる状態が病気の原因となります。
代表的な疾患は以下の通りです:
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甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
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甲状腺機能低下症(橋本病など)
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甲状腺炎(亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎など)
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甲状腺腫瘍(良性・悪性)
甲状腺疾患における薬物治療は、ホルモンの過不足を正常化することが目的であり、個々の疾患や症状、ライフステージ(妊娠など)に応じて最適な処方が必要です。
主な治療薬一覧と一般名称・製品名
【甲状腺機能亢進症の治療薬】
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一般名:チアマゾール(Methimazole)
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製品名:メルカゾール(Mercazole)
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特徴:長時間作用型。1日1回投与が可能。
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一般名:プロピルチオウラシル(Propylthiouracil)
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製品名:プロパジール、チウラジール
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特徴:妊娠初期の第一選択。肝機能障害リスクあり。
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一般名:無機ヨウ素(Inorganic Iodine)
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製品名:ヨウ化カリウム丸(Lugol液、ヨウレチン)
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特徴:緊急時(甲状腺クリーゼなど)に使用。
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【甲状腺機能低下症の治療薬】
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一般名:レボチロキシンナトリウム(Levothyroxine Sodium)
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製品名:チラーヂンS(Thyradin-S)
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特徴:標準的なホルモン補充療法。朝空腹時に服用。
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【特殊な状況で使用される薬】
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リオチロニンナトリウム(Liothyronine Sodium)
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製品名:チロナミン
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特徴:T3製剤。Low T3症候群や特殊なケースで使用。
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ガイドラインに基づく最新の治療指針
日本甲状腺学会ガイドライン(2023年版)による推奨:
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バセドウ病初期治療にはメルカゾールを第一選択とする。
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妊娠初期にはプロピルチオウラシルを使用し、妊娠中期以降にメルカゾールへ切り替える。
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甲状腺機能低下症では、レボチロキシン(チラーヂンS)が唯一推奨される。
American Thyroid Association (ATA, 2017):
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小児や妊婦に対しては特別な配慮が必要。
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治療目標はTSHを年齢・妊娠状態に応じて最適化すること。
薬剤ごとの安全性、新規性、当院の処方の独自性

【安全性について】
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メルカゾール:稀だが無顆粒球症(頻度:0.3〜0.5%)の副作用あり。
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プロピルチオウラシル:肝障害リスク(頻度:0.1〜0.2%)に注意。
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チラーヂンS:正確な用量調整が必要。過剰摂取で心負荷のリスク。
【新規性と独自性】
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近年、T3製剤(チロナミン)の再評価が進んでおり、特定の慢性疾患や難治性疲労への応用が検討されています(Jonklaas J. Thyroid. 2021)。
【当院の処方の特徴】
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病態とライフステージ(妊娠・高齢者・持病)に応じたきめ細かな投薬設計。
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血中濃度モニタリングによる「やりすぎない治療」
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必要に応じてTRAbやrT3などの特殊検査も実施。
当院でのサポート

当院では、甲状腺専門医による最新かつ安全な薬物治療を提供しています。
1. 初診時の丁寧な薬剤説明
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一般名・製品名の違い、副作用や服用タイミングを分かりやすくご説明。
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生活スタイルやライフステージに合わせた個別提案。
2. 定期的なモニタリングと適切な用量調整
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TSH, Free T4, Free T3を基準に、過不足のない治療を目指します。
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必要に応じて血球検査や肝機能検査も併用。
3. 他院で治療中の方のセカンドオピニオンも対応
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「今の薬が合っているか不安」「妊娠を考えているが大丈夫か」など、お気軽にご相談ください。
甲状腺疾患における薬物療法は、患者さまの生活と密接に関係します。私たちは、正しい知識と最新のエビデンスに基づいた医療を通じて、安心して治療を継続していただける環境づくりに努めています。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。