橋本病で顔つきが変化する?

橋本病とは?

橋本病とは?橋本病とは、免疫機能の異常、すなわち自己免疫が原因で発症する甲状腺疾患の1つで、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。

橋本病患者の多くは、甲状腺が腫れます。また、自己免疫によりリンパ球が甲状腺を破壊するので、甲状腺ホルモンの産生が低下し、甲状腺機能低下症になることもあります。

橋本病について詳しくはこちら

橋本病は顔つきに変化が現れる

橋本病は顔つきに変化が現れる橋本病患者は、甲状腺機能の低下が原因で、外見的に症状が観察されることがあります。

例えば、顔のむくみがあります。まぶたや唇がむくみ、顔全体の皮膚もむくんだようになり、気の緩んだ表情になります。橋本病が原因で起きるむくみは、起床時に最も酷く、午後に入っておさまってくることや、むくんだ部分を指で押して凹ませても元通りになる、などの特徴があります。しかし、このむくみは、睡眠不足、飲酒、ストレスなど別の原因からのむくみとは区別しづらく、橋本病に特徴的ではありません。

橋本病に特徴的な外見的症状としては、甲状腺の腫大が挙げられます。 びまん性甲状腺腫と呼ばれるように最初はびまん性に甲状腺が腫れ、時間が経つと徐々に硬いしこりができてきます。 これら以外に、甲状腺機能の低下によって生じる外見的症状には、以下のようなものがあります。

  • 抜け毛の増加
  • 皮膚の乾燥
  • 体重の増加

しかし、これらの症状で病院に相談しても、橋本病が疑われず、誤診されることもあります。こうした症状があって、長期に治療を受けているにもかかわらず、症状が改善しない時には、甲状腺専門の病院を受診することをご検討ください。

症状の改善を目的とした治療を行う

症状の改善を目的とした治療を行う橋本病は、主に甲状腺ホルモンを投薬する薬物療法で治療がなされます。

この治療は、橋本病の原因である自己免疫を治療することを目的としていません。現状では、橋本病を原因から根本的に治療する方法はありません。しかし、この薬物療法によって、甲状腺機能低下症によって生じる、顔のむくみや首の腫大などの外見的症状は改善することが期待できます。

甲状腺が急に痛みを伴って腫れるような時には、抗炎症剤であるステロイドを服用して炎症を抑えることが可能です。お薬で抑えても、痛みや腫れが繰り返すような時には、甲状腺を切除する手術を行う場合もあります。甲状腺を切除すると、薬物療法と同様に外見的症状は改善することが期待できます。しかし、甲状腺を切除したため、甲状腺ホルモンを補う投薬を一生続けなければならなくなります。

顔つきに特徴的な症状が現れるバセドウ病

顔つきに特徴的な症状が現れるバセドウ病バセドウ病は橋本病と同様に自己免疫疾患であり、橋本病と混同されやすい病気です。

バセドウ病では、顔つきに特徴的な症状が生じることがあります。 最もよく観察されるのは、眼球突出と呼ばれる症状で、目が前に飛び出します。まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こって生じた腫れが、眼球を前へ押し出すことが原因です。あるいは、他の症状としては、まぶたの腫れや逆さまつげが起きたり、まぶたが吊り上がったりするような特徴的な顔つきが主に目元の周辺に現れることもあります。

バセドウ病について詳しくはこちら

橋本病の主な症状

代謝が悪くなり、むくんだり太ったりする

甲状腺ホルモンには新陳代謝を活性化する作用があるため、甲状腺ホルモンが不足すると体の中での物質代謝が低下します。物質代謝が低下すると、毛髪や皮膚が生気をなくしたようになり、全体的に老けた印象を与えます。

バセドウ病がエネルギーを過剰に消費する「燃焼型」である一方、橋本病はエネルギーをうまく消費できない「不燃型」です。

むくむ

体内の水分が外へうまく排出されず、体の中に蓄積するので、体の様々な場所がむくみます。

皮膚の下の組織

組織間隙に、水と同時にムコ多糖類(コンドロイチン硫酸やヒアルロン酸など)が大量に貯留し、皮膚や粘膜が肥厚する「粘液水腫(ねんえきすいしゅ)」になります。

浮腫のため、まぶたが腫れ、そのために目が細くなります。唇もむくんだようになり、気力がなさそうな特徴的な顔つきになります。

舌がむくんで腫れると、話すときに舌がもつれて、しゃべりにくくなります。

口内の粘膜

口内の咽頭や声帯の粘膜がむくむと、声がれがして、声のトーンが低くなります。

太る

食事の量が少なくても、太ってきます。カロリー消費量が低下する上に、体内に水分が溜まってむくむのが原因です。

コレステロール値が上昇する

体内でコレステロールの分解速度が下がるため、血液中のコレステロール値が上がります。

寒がりになる

エネルギーの燃焼が悪くなるため、熱を効率よく作出することができず、体温が低下します。冷えの解消は難しく、暑い時期が苦手なバセドウ病患者とは反対に、寒い時期が苦手になります。

汗をかかない

代謝が悪くなるため、汗をかかなくなります。

汗をかかない

代謝が悪くなるため、汗をかかなくなります。

内臓の働きが弱まる

甲状腺機能の低下によって、全身の臓器の機能も低下します。
特に、腸や心臓では、以下のように、バセドウ病とは逆の状態になります。

脈がゆっくり、穏やかになる

バセドウ病では、心臓の機能が亢進して頻脈になります。一方、橋本病では、心臓の機能が低下して徐脈になり、脈拍は1分間に60以下(正常値:約70~80)と、脈が遅くなります。
また、心臓を包む袋(心嚢と呼ばれます)に心嚢液が貯留すると、心嚢が増大します。

便秘になる

甲状腺ホルモンは、腸の蠕動運動を促進する作用があります。
そのため、バセドウ病では、腸の蠕動運動が過剰になり下痢ぎみになりますが、橋本病では、腸の蠕動運動が弱まって便秘になります。

卵巣の機能に影響する

甲状腺ホルモンは卵巣にも影響を及ぼします。そのため、甲状腺ホルモンが過剰であっても不足していても、月経の異常が起こります。

橋本病の場合、一時的に月経回数が増えますが、病気の進行とともに月経期間が長期化し、次の月経までの間隔が長くなります。さらに重症になると、無月経になったりします。月経不順だけではなく、無排卵になったり、妊娠していても流産したりします。ただし、このような問題は、無治療だと起こりやすく、きちんと甲状腺ホルモンを適正量投与していれば、問題は生じません。

甲状腺ホルモンの低下は胎児や妊娠継続に影響を及ぼしますので、妊娠を要望されている女性は甲状腺機能の検査を受けることが望ましいです。

血流が悪化して筋力が落ち、足がつる

甲状腺ホルモンの不足によって血流が悪化し、その結果、筋肉がつりやすくなります。

過剰な運動をしたり筋肉を疲労させたりしていないのに、例えばふくらはぎなどの筋肉が突然つるようになります。他にも、首、腕、腰などの筋肉がつる場合もあります。

脳の働きが低下し、無気力状態になったり、もの忘れが激しくなったりする

甲状腺ホルモンは脳の神経細胞を活性化しますので、甲状腺ホルモンの不足によって脳の働きも低下します。

もの忘れ

記憶力の低下によって、考える力が落ちたり、もの忘れが多くなったりしますが、治療をすればこういった問題は生じません。
実際、軽症の橋本病患者に、治療のために甲状腺ホルモン薬を投与したところ、記憶力、計算力、状況認識などが改善したことが報告されています。

意欲の低下

何かをする気力や意欲が低下します。
動作が緩慢になり、何事にも面倒くさがって物を片づけられなくなったりして、日常生活に支障をきたすようになります。

眠たがり

寝起きが悪く、昼間も睡眠不足のような状態で、乗り物の中などどこでも居眠りをするようになります。

うつ、認知障害

精神面での症状が強くなると、精神科の医師が認知症やうつ病と誤診し、精神疾患の薬剤を処方することがあります。
そのような場合、橋本病患者は代謝機能が低下しているため、体内で薬剤がなかなか分解されずに過剰にお薬の効果が生じ、昏睡状態に陥ることがありますので、お気をつけください。

TOPへ