甲状腺と「におい」の関係とは? 〜体臭・口臭の背景にあるホルモンバランスの乱れ〜

甲状腺ホルモンは、全身の代謝や自律神経、汗腺の働きに関わる重要なホルモンです。甲状腺機能が低下したり、過剰に働いたりすると、体内の化学反応が乱れ、「におい」にも影響を及ぼすことがあります。
甲状腺疾患で見られる主なにおいの変化
-
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):汗が多くなり、皮脂と混ざって体臭が強くなる
-
甲状腺機能低下症(橋本病など):代謝低下により、皮脂の酸化臭や口腔内の乾燥による口臭が目立つ
これらのにおいの変化は、甲状腺の病気が隠れているサインかもしれません。
なぜ甲状腺の異常でにおいが変わるのか? 〜ホルモンと代謝の関係〜
【1】代謝の異常と汗・皮脂の変化
甲状腺ホルモンは、体温調節や発汗にも関与しており、
-
機能亢進症では、汗の量が増え、常在菌との反応で強い体臭が発生しやすい
-
機能低下症では、汗が減ることで皮膚のターンオーバーが遅れ、酸化臭が強まる (Harvey CB, Williams GR. Nat Rev Endocrinol. 2002)
【2】自律神経と唾液分泌の乱れによる口臭
-
機能低下症では唾液分泌量が減少し、ドライマウスになりやすく、結果として細菌の増殖を招きやすい(Bennett M et al., Oral Dis. 2016)
-
舌苔の蓄積や、口腔内pHの変化も悪臭の原因となります
【3】肝機能や腸内環境への影響
-
甲状腺ホルモンの不足により、肝機能や腸内環境が悪化し、アンモニアや硫黄系の体臭が強くなるケースもあります
ガイドラインでの取り扱いと臨床的な重要性
【最新のガイドライン】
日本甲状腺学会(2023年改訂)では、においそのものに関する直接的記述は少ないものの、甲状腺機能低下症の症状として「皮膚の乾燥」や「便秘」「疲労感」に加えて、「精神的な抑うつ」「無関心」などが挙げられています。 これらは、患者がにおいの変化に気づきにくくなる要因でもあります。
【においとQOL(生活の質)】
2021年に発表されたデンマークの研究では、甲状腺疾患患者のうち23%が「においの変化による対人関係の悩み」を訴えていたというデータがあります(Larsen PR et al., J Endocrinol Invest. 2021)。
新しい視点と当院の独自のアプローチ

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、「におい」の変化を甲状腺疾患の一つの臨床的サインと捉え、以下のような独自のサポート体制を行っています。
【1】においに関する問診強化
-
初診時に「最近、体臭や口臭の変化に気づいたか」を問診票に追加
-
においの変化が自律神経や代謝異常を反映している可能性を重視
【2】女性・若年層に配慮した対応
-
においの相談は心理的ハードルが高いため、スタッフが丁寧にサポート
-
必要に応じて女性医師・看護師による対応や個別相談も可
【3】においと検査結果の相関を蓄積
-
Free T3/T4, TSH, 抗TPO抗体, 抗TG抗体の数値と主観的なにおいの自覚をデータとして記録
-
将来的にはAIによる分析にも活用予定
当院でのサポート

においの変化はデリケートな悩みですが、それが甲状腺疾患の早期発見につながることもあります。
当院の主な取り組み:
-
甲状腺疾患における体臭・口臭のチェックと相談対応
-
血液検査によるホルモンバランスの精密診断
-
ドライマウス対策の生活指導、必要時は歯科連携
-
生活習慣・食事内容の見直し(栄養士によるサポート)
-
においの変化をQOL低下と捉え、身体面・心理面からのケア
「最近、口臭が気になる」「汗のにおいが変わった気がする」 そんな小さな変化も、甲状腺の不調のサインかもしれません。 お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
-
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
-
日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。