【糖尿病と体臭、口臭について】

糖尿病とニオイの関係とは?〜体臭・口臭が教えてくれる身体のサイン〜

糖尿病は血糖値が慢性的に高い状態が続く疾患で、全身の代謝や免疫機能に影響を与えます。その結果、体臭や口臭が変化することがあり、これが糖尿病のサインとなる場合もあります

主な変化には以下のようなものがあります:

  • 口の中が甘酸っぱい、またはアセトン様のにおい(ケトン臭)

  • 体臭が脂っぽくなる、あるいはアンモニア臭を帯びる

  • 足や脇などの汗のにおいが強くなる

これは、糖代謝が乱れることで発生する代謝産物や、免疫力の低下による細菌の繁殖が関係していると考えられています(ADA, 2022)。

なぜ糖尿病で体臭・口臭が起こるのか? 〜メカニズムを科学的に解説〜

【1】ケトアシドーシスとアセトン臭(口臭)

インスリンが極端に不足すると、体はエネルギー源として脂肪を分解し、ケトン体(アセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトン)を産生します。この中のアセトンが肺を通じて排出されることで、**甘酸っぱい果物のようなにおい(ケトン臭)**が口から発生します。

  • 発生率:1型糖尿病の新規発症時に30〜40%程度で観察(Kitabchi AE et al., Diabetes Care, 2009)

【2】免疫低下と細菌増殖による口臭・体臭

高血糖状態では白血球の機能が低下し、口腔内や皮膚の常在菌のバランスが乱れるため、嫌気性菌などが増殖して悪臭の原因となります(Socransky SS et al., J Clin Periodontol. 1998)。

  • 歯周病を合併する糖尿病患者の割合:約60%(日本糖尿病学会, 2021)

【3】汗腺機能と皮脂分泌の異常

糖尿病では交感神経や自律神経の機能が乱れやすく、汗のかき方や皮脂分泌にも影響を与えることで、汗臭・体臭の変化が起こると考えられます。

ニオイを軽視しないで!早期診断と医療的意義

【見逃されがちなニオイの変化】

「最近、においが気になる」「家族に言われた」という小さな変化が、糖尿病やその合併症の早期発見につながることがあります。

【ニオイが示す疾患リスク】

  • 口臭(ケトン臭):1型糖尿病やインスリン欠乏状態(糖尿病ケトアシドーシス)の可能性

  • アンモニア臭(体臭):糖尿病性腎症による尿毒素の皮膚排出

  • 甘い体臭:脂肪代謝異常によるケトン体の過剰排出

【研究報告】

  • 2020年の韓国の研究では、糖尿病患者の約48%が体臭の変化を自覚しており、そのうちの70%は医療機関での相談を行っていなかったと報告(Lee SH et al., BMC Endocr Disord. 2020)

当院で行っている新しい取り組みと独自性

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、ニオイの変化を糖尿病管理の一環として積極的に評価しています。

【1】糖尿病+口腔内評価の導入

  • 歯周病や口臭評価のためのスクリーニングチェックシート

  • 必要に応じて歯科との連携紹介

【2】栄養士・生活指導との連携

  • 食生活による体臭・口臭の改善方法を指導

  • 高たんぱく低糖質食、発酵食品の活用など

【3】新規性のある患者教育

  • 体臭や口臭に関するオリジナル冊子を配布

  • 「においの変化が教えてくれる身体のサイン」について医師・看護師が丁寧に説明

【4】数値と症状の対応データの蓄積

  • HbA1cやケトン体、尿検査などの数値と自覚症状を記録

  • 将来的にAIでの分析にも対応予定

当院でのサポート

 

糖尿病とニオイの関係はデリケートなテーマですが、当院ではその悩みに真摯に向き合います。

  • 気になる体臭・口臭の相談も歓迎(匿名・対面どちらも可)

  • 必要に応じて口腔内・腎機能・肝機能などの検査を追加

  • 管理栄養士による生活指導(口臭・体臭に配慮した食事の工夫)

  • 精神的サポートが必要な場合、心理カウンセリングも紹介

「誰にも相談できなかった」「何科に行けばいいかわからなかった」そんな方にとって、安心して相談できる窓口を目指しています。

気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

 

TOPへ