小児肥満とは?— 成長過程における“見逃されやすいリスク”

こどもの肥満は、単なる体型の問題にとどまらず、将来の生活習慣病のリスク因子として注目されています。特に、2型糖尿病・高血圧・脂質異常症・心血管疾患の予備軍として、その重要性が強調されています。
小児肥満の定義(日本肥満学会)
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標準体重に対して肥満度20%以上
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**BMIパーセンタイル値85%以上(米国CDC基準)**も用いられる
小児肥満の原因
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高エネルギー摂取と運動不足
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スクリーンタイムの増加
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睡眠不足やストレス、家庭環境の影響
糖尿病・インスリン抵抗性との関連
インスリン抵抗性の発症
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肥満児では内臓脂肪の蓄積が早期から見られ、 → インスリン感受性の低下、高インスリン血症へと進行
小児肥満と2型糖尿病
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日本でも小児期の2型糖尿病の発症が増加傾向
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米国の大規模研究(Bogalusa Heart Study)では、 → 肥満児の成人後の糖尿病発症率は非肥満児の3〜5倍[1]
その他の代謝異常との関連
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肥満児の約40〜60%が脂質異常症・耐糖能異常を併存[2]
心血管疾患の将来リスクを高めるメカニズム
動脈硬化の始まりは“こども”から
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Bogalusa研究、Pathobiological Determinants of Atherosclerosis in Youth Study(PDAY)にて、 → 肥満児では10代前半からアテローム性変化が進行[3]
主要なリスク増加因子
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**高血圧、脂質異常、インスリン抵抗性、炎症マーカー(CRP)**の上昇
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肥満のまま成人に移行した群は、 → 心筋梗塞・脳卒中のリスクが約2〜3倍に上昇[4]
日本における傾向
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学校健診データから、肥満度の高い児童で高血圧・高TG・低HDLが増加[5]
予防と介入のタイミング— 小児期こそ“黄金期”

小児期の生活習慣改善が鍵
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健康的な食事パターン(野菜・果物・全粒穀物中心)
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運動(週150分以上の中強度活動)
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睡眠(小学生:9〜11時間、思春期:8〜10時間)
早期介入の効果
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生活習慣改善+保護者教育により、 → 肥満度減少、インスリン抵抗性の改善が確認されている
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小児期に減量できた子どもは、 → 将来の糖尿病・高血圧リスクが非肥満と同等に近づく[6]
スクリーンタイムと行動習慣の見直し
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1日2時間以内を推奨(WHO)
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食事中のTV視聴・夜間のスマホ利用の制限が重要
当院でのサポート

当院では、小児期からの生活習慣病リスク予防に重点を置いた診療を行っております。
1. 小児の肥満と代謝リスクの評価
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身長・体重・肥満度・腹囲・BMIの測定
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インスリン、HbA1c、脂質、尿酸、ALT、CRPなどの血液検査
2. ご家族と連携した生活指導
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専門医による食事記録の確認と行動変容型支援
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ご家庭の協力を得ながら、**「家族まるごと予防」**を実施
3. 小児期からの動脈硬化予防
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**頸動脈エコーや血管年齢評価(CAVI)**を年齢に応じて導入
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将来を見据えた定期フォローと、成長に応じた支援を継続
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。
引用文献
[1] Freedman DS, et al. N Engl J Med. 2001;344(23):1719–1725.
[2] Weiss R, et al. N Engl J Med. 2004;350(23):2362–2374.
[3] Berenson GS, et al. N Engl J Med. 1998;338(23):1650–1656.
[4] Juonala M, et al. N Engl J Med. 2011;365(20):1876–1885.
[5] 文部科学省. 学校保健統計調査. 2023年.
[6] Reinehr T, et al. Int J Obes (Lond). 2010;34(10):1470–1475.