やせ薬・ダイエットサプリとは何か?その実態と分類

現代社会において、体重管理は多くの人にとって関心の高いテーマです。その中でも「やせ薬(痩身薬)」や「ダイエットサプリメント」は、手軽に痩せられる手段として広く利用されています。
やせ薬は主に医師の処方を必要とする医薬品であり、主に以下のような分類があります:
-
食欲抑制薬(例:マジンドール)
-
脂肪吸収抑制薬(例:オルリスタット)
-
中枢刺激薬(アンフェタミン系)
一方、ダイエットサプリメントは主に健康食品や機能性食品として市販されており、以下の成分を含むことが多いです:
-
カフェイン・ガルシニア・L-カルニチン
-
甲状腺に作用する可能性のあるヨウ素やフォルスコリン
これらの薬剤やサプリメントは、適切に使用すれば効果が期待できる反面、ホルモンバランスへの影響、特に甲状腺機能に与える影響には注意が必要です。
甲状腺ホルモンと代謝の関係
甲状腺ホルモンは、代謝を調整する重要なホルモンです。T3(トリヨードサイロニン)およびT4(サイロキシン)は、基礎代謝率を上げ、脂肪燃焼を促進します。
-
**甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)**では、過剰な代謝により体重減少、食欲亢進、動悸、発汗などの症状が現れます。
-
**甲状腺機能低下症(橋本病など)**では、代謝が低下し、体重増加、むくみ、倦怠感などが起こります。
このようなホルモンバランスが崩れた状態でやせ薬を使用すると、副作用が強く出ることがあり、安全性に問題があります。
やせ薬やサプリと甲状腺への影響・報告されている事例
ヨウ素過剰摂取による甲状腺機能異常
日本人は日常的に昆布やわかめなどからヨウ素を多く摂取しており、さらにサプリなどから過剰摂取すると、甲状腺機能亢進症や低下症を引き起こす可能性があります。
-
文献:Zimmermann MB. "Iodine deficiency and excess in children: worldwide status in 2013." Endocr Pract. 2013
サプリに混入された甲状腺ホルモン
一部の違法サプリメントには、甲状腺ホルモンが意図的に混入されていた例が報告されています。これによりユーザーは体重減少を経験しますが、これは甲状腺中毒症に相当し、心房細動や骨粗鬆症のリスクを高めます。
-
文献:FDA Health Fraud Alert, 2010年レポート
フォルスコリンや天然成分の甲状腺刺激
天然ハーブ成分(例:フォルスコリン)は、cAMP経路を刺激することで、間接的に甲状腺機能に影響を与える可能性が指摘されています。
ガイドラインと専門家の見解 ─ 学会の警鐘

2023年の日本甲状腺学会の声明では、ヨウ素を含むサプリメントや、甲状腺ホルモンに類似した作用をもつ天然成分を含む製品の無秩序な使用に対する注意喚起がなされています。
-
日本甲状腺学会「甲状腺疾患とサプリメントに関する注意点(2023年改訂)」より
また、米国甲状腺学会(ATA)も、甲状腺疾患のある患者は、サプリメント使用前に医師と相談するべきであると強調しています。
新規性としては、これまで美容目的で使われていた成分のうち、甲状腺へ影響するリスクがあるものの洗い出しと一覧化が進められつつあることが挙げられます。
当院でのサポート

当院では、甲状腺疾患や代謝異常に関して、以下のようなトータルサポートを行っています:
-
初診時の詳しい問診とサプリ使用歴の聴取
-
甲状腺ホルモン検査(TSH, FT3, FT4)、抗体検査、超音波検査
-
必要時、ヨウ素摂取量の評価と食事指導
-
内分泌専門医による継続的なフォローアップ
-
美容・ダイエット目的のサプリメントや薬剤のリスクについての啓発と相談窓口
患者様が安心して生活できるよう、「美」と「健康」のバランスを重視した医療提供を行っています。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
-
日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
-
日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。