内科クリニックでよく処方される抗血小板薬と抗凝固薬について

抗血小板薬と抗凝固薬の違いとは?

抗血小板薬と抗凝固薬は、いずれも血栓形成を抑制し、脳梗塞や心筋梗塞、肺塞栓症などの予防や治療に使用される薬剤ですが、作用する機序や適応疾患が異なります

分類 主な作用機序 適応疾患の代表例
抗血小板薬 血小板の活性化・凝集を阻害 虚血性心疾患、脳梗塞の再発予防
抗凝固薬 凝固因子の活性化を抑制 心房細動・静脈血栓塞栓症・肺塞栓症

よく使われる抗血小板薬の種類と特徴

アスピリン(バイアスピリン® など)

  • COX-1阻害によるトロンボキサンA2生成抑制

  • 1日1回内服(通常100mg)

  • 脳梗塞・心筋梗塞の再発予防に第一選択

  • 胃潰瘍・出血リスクに注意

クロピドグレル(プラビックス®)

  • ADP受容体(P2Y12)阻害作用

  • アスピリンが使えない場合の代替薬として有用

  • CYP2C19代謝依存のため効果の個人差あり

シロスタゾール(プレタール®)

  • PDE3阻害による血小板凝集抑制+血管拡張作用

  • 脳梗塞再発予防に使用、脈拍上昇・頭痛などの副作用あり

  • 間欠性跛行改善にも有効

他の抗血小板薬(参考)

  • プラスグレル(エフィエント®):急性冠症候群に強力な効果

  • チカグレロル(ブリリンタ®):日本では未承認

よく使われる抗凝固薬の種類と特徴

ワルファリン(ワーファリン®)

  • ビタミンK拮抗による凝固因子(Ⅱ, VII, IX, X)合成阻害

  • INRモニタリングが必要(目標INR 1.6〜2.6)

  • 食事(ビタミンK)・併用薬の影響が大きい

DOAC(直接経口抗凝固薬):現在の主流

薬剤名 主な作用部位 特徴
ダビガトラン(プラザキサ®) トロンビン(第Ⅱa因子)阻害 消化器症状あり、拮抗薬あり
リバーロキサバン(イグザレルト®) 第Xa因子阻害 食後内服、腎機能低下時に注意
アピキサバン(エリキュース®) 第Xa因子阻害 高齢者・腎機能障害例でも使いやすい
エドキサバン(リクシアナ®) 第Xa因子阻害 1日1回でアドヒアランス良好

薬剤選択と使用時の注意点

抗血小板薬

  • 虚血性心疾患や脳梗塞の**「動脈系血栓」に対して有効」**

  • 多剤併用(DAPT)時は消化管出血リスク増加 → 胃薬(PPI)併用を検討

  • バイアスピリンとプラビックスの併用期間は原則1年以内が多い

抗凝固薬

  • 心房細動などによる**「静脈系血栓・心原性脳塞栓症」の予防に中心的**

  • DOACは腎機能・体重・年齢で用量調整が必要

  • 外科手術・内視鏡検査時には休薬スケジュールの調整が必要

高齢者・低体重・腎機能低下例への注意

  • DOACは高齢・体重≦60kg・eGFR≦50で減量や慎重投与が必要なことが多い

  • 出血傾向(脳出血・消化管出血既往)はリスクとベネフィットを個別評価

当院でのサポート

 

当院では、抗血栓療法を必要とする患者さんに対して、慎重かつ柔軟な対応を行っています。

1. 適切な薬剤選定とモニタリング

  • 心電図・頸動脈エコーなどを活用した脳心血管リスク評価

  • eGFR、体重、年齢などをもとに適正用量を決定

2. 出血リスク・併用薬の確認

  • PPI併用、NSAIDsとの重複、腎機能変動などを考慮

  • 外科的処置予定がある場合は、事前に中止・再開時期を調整

3. 継続的な指導・管理体制

  • 服薬アドヒアランス向上のため、処方カレンダーや血液検査の定期管理

  • 必要に応じて循環器内科・脳神経内科と連携し、継続的なリスク管理を実施


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医


引用文献

  1. Wallentin L, et al. N Engl J Med. 2009;361(11):1045–1057.

  2. Granger CB, et al. N Engl J Med. 2011;365(11):981–992.

  3. Connolly SJ, et al. N Engl J Med. 2009;361(12):1139–1151.

  4. Patel MR, et al. N Engl J Med. 2011;365(10):883–891.

 

TOPへ