小児糖尿病とは? ─ 現在の状況と分類

小児の糖尿病は、年々増加傾向にあります。特に1型糖尿病は、最も一般的な小児糖尿病のタイプであり、自己免疫反応により膵臓のインスリン産生が破壊されることで発症します。また、生活習慣の変化や肥満の増加により、小児2型糖尿病の報告も増加しています。
主な分類:
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1型糖尿病:インスリン依存性。小児糖尿病の約90%を占めます。
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2型糖尿病:インスリン抵抗性と分泌不全による。近年増加中。
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MODY(若年発症成人型糖尿病):遺伝的要因によるまれなタイプ。
日本糖尿病学会の最新ガイドライン(2023年)では、小児の糖尿病の早期発見と早期治療の重要性が強調されており、HbA1c 6.5%以上、空腹時血糖126 mg/dL以上、随時血糖200 mg/dL以上のいずれかを基準としています。
出典:日本糖尿病学会 編『糖尿病治療ガイド2023』
症状と早期診断の重要性 ─ 見逃されがちなサインとは
小児の糖尿病は、以下のような症状から気づかれることが多いです。
主な症状:
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異常な喉の渇き、多飲多尿
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急激な体重減少
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倦怠感、集中力の低下
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夜尿の再発
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感染症(皮膚炎、膀胱炎など)の頻発
ただし、初期症状が軽微で風邪と誤診されるケースも多いため、注意深い観察が求められます。特に1型糖尿病は、ケトアシドーシス(DKA)を伴う重篤な発症が少なくないため、早期診断が生命予後を左右します。
2021年の厚生労働省報告によると、小児1型糖尿病患者の約30%が初診時にDKAを呈しているというデータがあります。
治療と日常管理 ─ 成長期の子どもへの配慮
小児糖尿病の治療は、成長・発達を妨げないように、細心の注意が必要です。
1型糖尿病:
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インスリン療法が基本(多くの場合1日4回以上の注射)
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近年では持続皮下インスリン注入療法(CSII)や、持続血糖モニター(CGM)との併用も増加
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カーボカウントによる食事指導が主流
2型糖尿病:
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生活習慣改善(食事・運動療法)
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必要に応じて内服薬またはインスリン導入
小児への対応では、本人だけでなく、保護者や学校関係者への教育が不可欠です。
出典:International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes(ISPAD) Clinical Practice Consensus Guidelines 2022
心理的ケアと社会的支援の必要性

小児糖尿病は、身体面だけでなく、心理面への配慮も非常に重要です。
精神的ストレス:
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友人や家族との関係性の変化
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インスリン注射や血糖測定に対する恐怖や抵抗感
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食事制限による「孤立感」
これらを軽減するため、
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小児心理士やスクールカウンセラーとの連携
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ピアサポート(同じ病気の子どもとの交流)
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学校での医療的ケア体制の整備
が推奨されます。
調査によれば、小児糖尿病患者の20%以上がうつ症状を経験していると報告されています(Diabetes Care. 2018;41(4):713-721.)。
当院でのサポート

当院では、小児糖尿病患者とそのご家族の安心と安全を第一に考え、以下のようなサポート体制を整えています。
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インスリン療法の指導:最新のペン型注射・CSII・CGMデバイスの操作方法を丁寧に指導。
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家族単位での教育:保護者向けセミナーや資料提供、学校提出用文書の作成支援。
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栄養士との連携:成長に必要な栄養バランスを確保しつつ、血糖管理を行う食事指導。
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心のケア:必要に応じて小児精神科・心理カウンセリングへの紹介。
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学校との連携:校医・養護教諭との情報共有、学校生活への配慮アドバイス。
糖尿病があっても、子どもが健やかに自分らしく育つために、私たちは医療と社会の「つなぎ役」としての責任を果たしてまいります。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。