尿酸と腎臓の関係—なぜ尿酸は腎臓を傷つけるのか?

尿酸はプリン体代謝の最終産物で、体内での90%以上が腎臓から排泄されます。そのため、尿酸値の異常は腎機能と密接な関係があります。
尿酸が腎障害を引き起こす機序
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尿細管内での結晶沈着による閉塞・炎症
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尿酸による腎小動脈の血流障害(腎虚血)
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活性酸素を介した酸化ストレスと炎症反応の増加[1]
尿酸とCKDの双方向関係
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高尿酸血症はCKDの独立したリスク因子であり、進行を加速
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逆にCKDによる排泄低下により、尿酸値が上昇しやすくなる
尿酸とCKD進行に関する疫学・臨床研究
主要研究のまとめ
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血清尿酸値が1mg/dL上昇するごとに、CKD進行リスクは約20〜30%上昇[2]
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eGFR 60未満の患者で、尿酸値が7.0mg/dL以上あると腎機能悪化の速度が有意に増加[3]
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日本の大規模コホート研究(Hisayama Study)でも、尿酸値高値は透析導入リスクの増加と相関[4]
糖尿病・高血圧との相互作用
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尿酸はインスリン抵抗性や高血圧のリスク因子としても機能し、 → CKDの悪化に「三重のメカニズム」で影響
尿酸値を下げることで腎機能は守れるのか?
降下療法による腎保護効果の検証
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FEATHER試験(日本):トピロキソスタット群でeGFR低下の抑制が有意[5]
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FREED試験:フェブキソスタットで腎障害進行率が有意に低下[6]
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海外のRCTではアロプリノールによるeGFRの維持効果も報告[7]
推奨される管理目標
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CKD合併例では尿酸値6.0mg/dL未満を目標とすることが多い
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腎機能や尿酸産生・排泄型に応じた個別化治療が必要
腎臓を守る生活と薬物療法の戦略

生活習慣の工夫
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水分摂取:尿量1,500mL以上を目安に
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プリン体摂取制限:ビール・レバー・魚卵の摂取に注意
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過剰な果糖(清涼飲料・ジュース)も尿酸上昇の原因
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減塩と適正体重維持も高血圧+腎保護に重要
薬剤選択のポイント
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アロプリノール:長期実績あり。腎機能で調整要
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フェブリク/トピロリック:腎機能に依存せず使用可能な点が強み
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ベンズブロマロン:排泄促進型で腎障害患者では注意
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CKD進行例ではSGLT2阻害薬やRAS阻害薬との併用が効果的
当院でのサポート

当院では、CKDの進行予防と透析回避を見据えた尿酸管理を積極的に行っています。
1. 検査とリスク評価
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血清尿酸、eGFR、尿蛋白、尿中尿酸、CRPなどを定期的に測定
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糖尿病・高血圧・脂質異常症との多因子リスク管理
2. 個別化された薬剤治療
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腎機能に応じて最適な尿酸降下薬を選択
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徐々に用量を増やしながら、痛風発作や腎虚血を防ぐ調整を実施
3. 生活習慣への指導とチーム医療
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専門医によるプリン体・果糖制限の指導
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十分な水分摂取の確保と減塩メニュー提案
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専門医や臨床検査技師との連携で、CKD悪化の兆候を早期に発見
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。
引用文献
[1] Kang DH, et al. J Am Soc Nephrol. 2002;13(12):2888–2897.
[2] Obermayr RP, et al. Kidney Int. 2008;73(3):300–306.
[3] Iseki K, et al. Hypertens Res. 2001;24(3):261–267.
[4] Tanaka T, et al. Nephrol Dial Transplant. 2014;29(5):956–962.
[5] Hosoya T, et al. Clin Exp Nephrol. 2014;18(6):876–885.
[6] Kojima S, et al. Ann Rheum Dis. 2020;79(4):498–504.
[7] Goicoechea M, et al. Am J Kidney Dis. 2010;55(1):78–86.