尿酸降下薬の選択:合併症プロファイルで最適化

尿酸降下薬治療の基本

1-1. 高尿酸血症と痛風の背景

高尿酸血症は単なる痛風の原因にとどまらず、腎障害・高血圧・心血管疾患・糖尿病などのリスク因子でもあります【1】。
したがって治療の目的は「発作予防」だけでなく、合併症を含めた全身管理に広がっています。

1-2. 尿酸降下薬の分類

現在、日本で使われる尿酸降下薬は主に以下の3系統です。

  • 尿酸生成抑制薬:アロプリノール、フェブキソスタット

  • 尿酸排泄促進薬:ベンズブロマロン、プロベネシド

  • 尿酸分解促進薬(国内では限定的):ラスブリカーゼ(腫瘍崩壊症候群で使用)

合併症別に考える薬の選択

2-1. 腎機能障害を伴う場合

  • アロプリノール:腎排泄型のため、腎機能低下例では用量調整が必須

  • フェブキソスタット:肝排泄型が主体で、腎機能障害患者にも使用しやすい【2】

  • ベンズブロマロン:腎結石リスクがあり、尿路結石歴がある患者では注意

2-2. 心血管疾患を伴う場合

  • CARES試験でフェブキソスタットに心血管死亡リスク増加の報告があり議論に【3】

  • 一方でFAST試験(欧州)ではリスク増加は認められず【4】

  • 心疾患既往例ではアロプリノールを第一選択にする傾向

2-3. 肝機能障害を伴う場合

  • ベンズブロマロンは肝障害リスクあり → 慎重投与

  • フェブキソスタットやアロプリノールの方が安全性高い

2-4. メタボリック症候群や糖尿病を伴う場合

  • 尿酸降下薬単独ではなく、SGLT2阻害薬やピオグリタゾンなどの代謝改善薬と併用するケースが増加

  • ベンズブロマロンはインスリン抵抗性改善の報告もあり【5】

最新のエビデンスとガイドライン

3-1. 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン2023

  • 治療目標:血清尿酸値 6.0mg/dL未満

  • 合併症に応じて薬剤を最適化することを推奨

3-2. 海外のエビデンス

  • ALL-HEART試験(2022):アロプリノールは冠動脈疾患患者の心血管イベントを減少させる可能性あり

  • FAST試験(2020):フェブキソスタットは心血管安全性でアロプリノールに劣らない

3-3. 新規性

  • SGLT2阻害薬は血糖降下と同時に尿酸を0.6〜1.0mg/dL低下させる効果が確認【6】

  • 生活習慣病合併例では、尿酸降下薬+代謝改善薬の組み合わせが注目されている

安全性と個別化医療

4-1. 副作用リスク

  • アロプリノール:皮疹・骨髄抑制(特にHLA-B*58:01陽性例で重篤皮膚反応リスク)

  • フェブキソスタット:肝機能障害、心血管リスク(議論中)

  • ベンズブロマロン:重篤肝障害(定期的肝機能チェックが必須)

4-2. 治療中のモニタリング

  • 血清尿酸値:開始後2〜4週ごとに確認し、維持期は3〜6か月ごと

  • 腎機能・肝機能・血糖・脂質も同時にモニタリング

4-3. 早期介入の意義

  • 痛風発作を繰り返す前に介入することで関節破壊・腎障害を予防

  • 高尿酸血症+高血圧・糖尿病・脂質異常症がある場合、早期に治療を始めることで10年後の心血管イベントを約30%減少との報告あり【7】

当院でのサポート

 

5-1. 包括的評価

  • 血清尿酸だけでなく、腎機能、肝機能、心血管リスク、血糖・脂質を同時に評価

  • 「合併症プロファイル」を把握して最適な薬剤を選択

5-2. 糖尿病専門医による治療戦略

  • 尿酸降下薬と糖尿病治療薬・降圧薬・脂質異常薬を含めたトータルマネジメント

  • SGLT2阻害薬など「尿酸+代謝全般」に作用する薬を積極的に活用

5-3. 個別指導

  • 尿酸・血糖・脂質を同時に下げる食生活の調整を医師が直接指導

  • 飲酒・体重管理・睡眠リズムなど生活習慣に即したアドバイス

5-4. 継続的フォロー

  • 定期的な採血・血圧測定・心エコーなどで合併症を早期に発見

  • その都度治療方針を柔軟に最適化


まとめ

尿酸降下薬の選択は「血清尿酸値」だけでなく、腎・心・肝・代謝の合併症プロファイルを考慮することが必須です。
当院では、糖尿病専門医が患者様の全身を俯瞰し、尿酸と生活習慣病リスクを同時に管理するオーダーメイド治療を行っています。


参考文献

  1. 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン2023.

  2. Becker MA, et al. Febuxostat compared with allopurinol in patients with hyperuricemia and gout. N Engl J Med. 2005.

  3. White WB, et al. CARES trial. N Engl J Med. 2018.

  4. Mackenzie IS, et al. FAST trial. Lancet. 2020.

  5. Yamanaka H, et al. Effects of uricosuric agents on insulin resistance. Clin Rheumatol. 2007.

  6. List JF, et al. SGLT2 inhibitors reduce serum uric acid. Diabetes Obes Metab. 2012.

  7. Chen JH, et al. Uric acid and cardiovascular risk. Arthritis Care Res. 2012.


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

TOPへ