甲状腺ホルモンと体重増減の関係:バランスの乱れが引き起こす症状

はじめに:甲状腺ホルモンと体重の関係とは?

甲状腺は首の前方に位置する小さな器官で、体の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンを分泌しています。このホルモンは、エネルギー消費、体温調節、心拍数、消化、さらには体重にも影響を与えます。甲状腺ホルモンのバランスが崩れると、体重の増減が起こりやすくなり、日常生活に支障をきたすことがあります。特に、原因不明の体重変化に悩む方は、甲状腺機能の異常が隠れている可能性があるため、注意が必要です。

本記事では、甲状腺ホルモンが体重にどのような影響を与えるかを解説し、蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックで行っている診断と治療方法についてご紹介します。ご自身の健康管理に役立ててください。

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甲状腺ホルモンの役割と体重への影響

甲状腺ホルモン(主にT3、T4)は、体全体のエネルギー代謝を調整する重要な役割を担っています。このホルモンが正常に分泌されていると、基礎代謝が適切に維持され、体重も安定しやすくなります。以下は、甲状腺ホルモンが体重に与える具体的な影響です。

  • 基礎代謝の調整
    甲状腺ホルモンは、全身の細胞がエネルギーを消費する速度を調整します。これにより、体の基礎代謝率が決まり、消費カロリーがコントロールされます。ホルモンのバランスが崩れると、代謝が上がりすぎたり、逆に低下しすぎたりすることがあります。

  • 脂質代謝の影響
    甲状腺ホルモンは、体内での脂質分解を促進します。ホルモンが不足すると脂肪が分解されにくくなり、体重が増加しやすくなります。一方、ホルモンが過剰に分泌されると、脂肪が過度に燃焼され、体重が減少します。

  • 食欲と消化機能の調整
    甲状腺ホルモンは、消化管の動きを調整し、消化吸収を正常に保つ役割もあります。ホルモンのバランスが崩れると、食欲不振や逆に過食が生じ、体重の増減に繋がることがあります。

これらの機能が正常に働くことで、私たちの体重はバランスを保っています。しかし、甲状腺ホルモンの分泌が異常になると、体重の急激な変化を引き起こすことがあり、これが健康リスクに繋がることもあります。
厚生労働省 - 甲状腺の病気に関する情報

日本甲状腺学会 - 甲状腺疾患について

日本内分泌学会 - 甲状腺疾患について

甲状腺機能異常と体重増減の具体的な症状

甲状腺機能異常には、主に「甲状腺機能低下症」と「甲状腺機能亢進症」があります。これらの疾患は、それぞれ異なる体重変化を引き起こします。以下に、主な症状と体重への影響をまとめました。

  • 甲状腺機能低下症(橋本病など)
    甲状腺ホルモンが不足することで、体全体の代謝が低下し、体重増加が見られることが多いです。主な症状としては、以下のようなものがあります。

    • 体重増加:代謝が低下し、エネルギー消費が少なくなるため、体重が増加します。特にむくみや脂肪の蓄積が見られやすくなります。
    • 疲労感・倦怠感:代謝低下により、エネルギー不足を感じやすく、常に疲れている感覚があります。
    • 便秘・消化不良:消化管の動きが遅くなり、便秘や消化不良が起こりやすくなります。
    • 寒がり:体温調節がうまくいかず、冷えを感じやすくなります。
  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
    甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が過度に活発になると、体重が減少します。以下が主な症状です。

    • 体重減少:食事量が変わらない、または増えても体重が減少します。筋肉量の減少や体脂肪の減少も見られることがあります。
    • 動悸・息切れ:心拍数が増加し、動悸や息切れを感じやすくなります。
    • 過度の発汗・暑がり:代謝が亢進し、体温調節が困難になるため、汗をかきやすくなり、暑さを感じやすくなります。
    • 手の震え・精神的な不安定:神経系にも影響を与えるため、手の震えやイライラ感、不安感が強まることがあります。

これらの症状が見られる場合は、甲状腺機能異常の可能性があるため、早めに専門医の診察を受けることが重要です。

甲状腺機能異常の診断方法と当院での検査内容

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、甲状腺機能異常に対して迅速かつ正確な診断を行い、適切な治療を提供しています。以下に、当院で行う主な検査内容を説明します。

  • 血液検査によるホルモン測定
    甲状腺ホルモン(T3、T4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルを測定し、甲状腺の機能を評価します。これにより、甲状腺機能低下症や亢進症の有無を確認します。

  • 抗体検査
    自己免疫性疾患(橋本病やバセドウ病)を疑う場合、抗サイログロブリン抗体(TgAb)や抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)を測定します。これにより、自己免疫反応が甲状腺に影響を与えているかどうかを確認します。

  • 超音波検査(エコー検査)
    甲状腺の大きさや形状、内部構造を確認し、結節や腫瘍の有無を調べます。しこりや腫れが見られる場合は、さらに詳細な検査(細胞診など)を検討します。

  • 診察と問診
    患者様の症状や生活習慣について詳しくお伺いし、総合的に診断します。家族歴や既往歴も重要な要素であり、発症リスクの評価に役立てます。

当院では、検査に適切な検査機器を用い、迅速で正確な診断を行っています。結果は最短で当日中にお伝えすることも可能です。

当院での甲状腺機能異常の治療法と生活習慣改善の提案

 

甲状腺機能異常の治療は、患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドのアプローチが重要です。当院では、以下の治療法を提供しています。

  • 甲状腺機能低下症の治療
    ホルモン補充療法として、チラーヂンなどの甲状腺ホルモン製剤を使用します。適切な量を調整しながら、代謝を正常化させ、体重や体調を安定させます。定期的な血液検査を行い、治療効果と副作用を確認しながら調整を行います。

  • 甲状腺機能亢進症の治療
    抗甲状腺薬(メルカゾールなど)や放射性ヨード療法を用いて、過剰なホルモン分泌を抑えます。症状が安定した後も、定期的なフォローアップを行い、再発防止に努めます。必要に応じて、外科的手術も検討します。

  • 生活習慣の改善提案
    甲状腺機能異常の治療と並行して、生活習慣の見直しを行います。バランスの取れた食事、適度な運動、ストレス管理が重要です。また、特定の食品(ヨウ素を多く含む海藻など)の摂取に注意する必要がある場合もあります。

  • 患者様への情報提供とサポート
    当院では、患者様が自身の健康を理解し、適切に管理できるようサポートしています。治療に関する情報提供や疑問への対応、カウンセリングを通じて、患者様が安心して治療を受けられる環境を整えています。

甲状腺機能異常は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、生活の質を維持できます。少しでも気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。

 

監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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