甲状腺薬とは ─ 基本的な役割と種類

甲状腺疾患の治療に使われる薬には、大きく分けて2つのタイプがあります。
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甲状腺機能低下症の治療薬:
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主に「レボチロキシンナトリウム(チラーヂンS®)」などの甲状腺ホルモン製剤
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不足した甲状腺ホルモンを補充する目的
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甲状腺機能亢進症の治療薬:
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主に「チアマゾール(メルカゾール®)」「プロピルチオウラシル(プロパジール®)」など
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過剰に産生された甲状腺ホルモンを抑制する目的
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これらの薬剤は、病態や重症度、年齢や妊娠・授乳の有無などによって処方が異なります。
甲状腺薬の価格一覧(2025年4月現在)
薬の価格は保険点数(薬価基準)に基づき設定されており、以下に主な甲状腺薬の1日量あたりの価格目安(3割負担の場合)を示します。
薬剤名 | 規格 | 1日使用量例 | 自己負担額(3割) |
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チラーヂンS®錠 50μg | 1錠 | 2錠(100μg) | 約12円 |
チラーヂンS®錠 100μg | 1錠 | 1錠(100μg) | 約10円 |
メルカゾール®錠 5mg | 1錠 | 2錠(10mg) | 約25円 |
プロパジール®錠 50mg | 1錠 | 3錠(150mg) | 約40円 |
チラーヂンS®細粒 1% | 1g | 0.1g(100μg相当) | 約15円 |
※薬価改定の影響により、時期によって変動があります。
ガイドラインと薬物治療の推奨
日本甲状腺学会の見解:
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バセドウ病の初期治療にはメルカゾールが第一選択薬として推奨されます。
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甲状腺機能低下症の標準治療にはレボチロキシン製剤の単独投与が推奨。
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近年、より安定的なT4単独療法(チラーヂンS®など)の有用性が再確認され、海外でも多数のガイドラインで支持されています。
欧米のガイドラインでは:
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米国甲状腺学会(ATA)では、レボチロキシンの代替薬(複合療法:T4+T3)は推奨されていません。
【参考文献】
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日本甲状腺学会ガイドライン2022
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American Thyroid Association Guidelines, 2014, 2016
新規性・独自性・安全性と薬剤選択の考え方

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新規性:海外では液状のレボチロキシン(oral solution)や持続放出型製剤の研究が進んでいますが、日本では主に錠剤または細粒が主流。
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安全性:甲状腺薬は適正に使用されれば安全性の高い薬剤です。ただし、
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抗甲状腺薬は白血球減少(無顆粒球症)や肝機能障害などの副作用に注意が必要です。
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甲状腺ホルモン剤は過剰投与で不整脈や骨粗鬆症のリスクがあります。
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独自性:日本ではヨウ素の摂取量が高いため、甲状腺機能への影響が欧米と異なり、薬剤選択も個別化が必要。
当院でのサポート

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、患者様の経済的負担にも配慮した治療計画を立てています。
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ジェネリックの活用:安全性と効果が確認されたジェネリック医薬品を希望に応じてご案内
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定期的な採血で無駄のない処方設計:過不足なく必要最小限で効果的な投与を行います
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医療費相談対応:生活保護受給者や高額療養費制度についてのアドバイスも可能
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院内掲示・ホームページでの価格透明化:安心して継続治療を受けられるように努めています
特にメルカゾールやチラーヂンといった薬剤は、長期服用になることが多いため、経済的な継続性も重視すべきポイントです。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。