痩せ型メタボ(normal-weight obesity)のリスクについて

「痩せているのに健康ではない」—痩せ型メタボとは?

**痩せ型メタボ(Normal-Weight Obesity:NWO)**とは、BMIが正常範囲(18.5〜24.9)でありながら、体脂肪率が過剰に高い状態を指します。見た目は“痩せている”にも関わらず、内臓脂肪型肥満に類似した代謝リスクを抱えるため、「隠れ肥満」とも呼ばれます。

痩せ型メタボの診断基準の一例

  • BMI:18.5〜24.9(正常体重)

  • 体脂肪率:男性25%以上、女性30%以上

  • 腹囲・内臓脂肪面積・インスリン抵抗性なども補助指標

痩せ型メタボが引き起こす健康リスク

1. 2型糖尿病の発症リスク

  • インスリン感受性が低く、耐糖能異常や空腹時高血糖をきたしやすい

  • 日本人の糖尿病患者の多くが非肥満・正常体重での発症[1]

2. 脂質異常症と動脈硬化

  • 内臓脂肪由来のアディポカイン異常、TNF-α、IL-6の分泌が動脈硬化を促進

  • 中性脂肪高値・HDLコレステロール低値・sdLDL上昇などが特徴

3. 筋肉量低下との関連(サルコペニア肥満)

  • 筋肉量が少なく、基礎代謝量も低いためさらに脂肪がつきやすい

  • 骨格筋の減少により、糖代謝や脂質代謝も悪化

なぜ痩せ型メタボは見逃されやすいのか?

健康診断の落とし穴

  • BMIや体重だけでは評価しきれない

  • 腹囲測定・血糖・脂質の指標で異常が初めて明らかになる

日本人特有の体型特性

  • **「皮下脂肪が少なく、内臓脂肪がつきやすい」**という民族的傾向

  • 同じBMIでも、白人よりも日本人は内臓脂肪蓄積率が高い[2]

食生活と運動習慣の背景

  • 過度な炭水化物中心の食事+運動不足が脂肪蓄積を助長

  • 特にデスクワーク中心の若年〜中年女性に多く見られる傾向

対策と治療戦略—「体重より体組成」の時代へ

1. 体脂肪率・筋肉量の測定

  • InBodyやBIA法での体組成評価を推奨

  • BMIが正常でも、内臓脂肪・筋肉量のチェックが必要

2. 栄養指導と食事改善

  • 高タンパク・低GI・適度な脂質を含むバランス食を基本に

  • 血糖スパイクを防ぐ食事順(野菜→タンパク→炭水化物)

3. 運動療法とレジスタンストレーニング

  • 有酸素運動+筋トレにより、筋肉量の維持と脂肪燃焼を両立

  • 週2〜3回の下肢中心トレーニングが効果的

4. 医学的管理の必要性

  • 空腹時血糖・HbA1c・中性脂肪・HDL-Cなどを定期的にモニタリング

  • 必要に応じてメトホルミンやGLP-1作動薬などの薬物治療も検討

当院でのサポート

 

当院では、「見た目は痩せているが、実は代謝リスクが高い」方々への専門的な検査と指導体制を整えています。

1. 体組成+血液+生活習慣の総合評価

  • InBodyによる筋肉量・脂肪率・基礎代謝の測定

  • 空腹時血糖・HbA1c・脂質・インスリン抵抗性の確認

2. 専門医による食事コンサルティング

  • 筋肉を増やし、脂肪を減らすための栄養サポート

  • 忙しい方でも実践しやすい「コンビニ活用」や簡単調理の提案

3. 専門医師によるアプローチ

  • 糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症の予防と早期介入

  • 運動習慣がない方にも段階的にスタートできる運動プログラムをご案内


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。


引用文献

[1] Yoon KH, et al. Diabetes Care. 2006;29(6):1450–1455.
[2] Lear SA, et al. Obesity (Silver Spring). 2007;15(11):2817–2824.

 

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