糖尿病と歯周病の関連と頻度、治療について

糖尿病と歯周病の深い関係性

糖尿病と歯周病(歯槽膿漏)は、相互に悪影響を及ぼし合うことが多くの研究で示されています。糖尿病があると、血糖コントロールが不良になることで免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。その結果、歯茎に炎症が起きやすくなり、歯周病のリスクが高まります。一方で、歯周病によって慢性的な炎症が持続することは、インスリン抵抗性を増加させ、糖尿病を悪化させるという悪循環を生じさせます。

文献参考:

  • Mealey BL, Oates TW. "Diabetes mellitus and periodontal diseases." J Periodontol. 2006;77(8):1289-1303.

  • Taylor GW, et al. "Periodontal disease and glycemic control in diabetes mellitus." J Periodontol. 1996;67(10 Suppl):1085-1093.

歯周病の頻度と糖尿病患者における特徴

日本における調査によると、糖尿病患者の約50%以上が中等度以上の歯周病を有していると報告されています(日本歯周病学会 2018年報告)。特に、HbA1cが7.0%以上の患者では、歯周ポケットの深さや出血指数が有意に高くなることが知られています。

また、糖尿病患者では歯周病の進行が早く、若年での重症化も見られます。歯茎の出血、歯の動揺、口臭の悪化、そして最終的には歯の喪失につながるリスクが高まるため、定期的な歯科受診が欠かせません。

データ参考:

  • 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査」

  • 日本歯科医師会「糖尿病と歯周病」資料

最新ガイドラインにおける報告と治療指針

2023年の日本糖尿病学会と日本歯周病学会の合同ガイドラインでは、「糖尿病治療の一環としての歯周病管理」が公式に盛り込まれました。特にHbA1c 7.0%以上の症例では、歯周基本治療(スケーリング、SRP)による血糖改善効果が統計的に有意であると報告されています。

さらに、歯周病治療後にインスリン抵抗性が改善し、内服薬の減量につながった例もあり、医科歯科連携がより重要視されるようになっています。

論文出典:

  • D'Aiuto F, et al. "Periodontitis and systemic inflammation: control of the local infection is associated with a reduction in serum inflammatory markers." J Dent Res. 2004;83(2):156-160.

  • Teeuw WJ, et al. "Treatment of periodontitis improves the a1c in type 2 diabetes patients." Diabetes Care. 2010;33(2):421-427.

早期診断・安全な治療の重要性

歯周病は初期症状が乏しいため、気づいたときには中等度〜重度に進行していることが少なくありません。糖尿病患者では特に進行が早いため、早期発見・早期治療が極めて重要です。

安全な治療のためには、主治医と歯科医師との情報共有が必要です。特にインスリンやSGLT2阻害薬を使用している方では、低血糖リスクにも注意が必要となります。また、歯科治療に際しては、抗生物質の選択や麻酔の使用においても糖尿病のコントロール状況に応じた配慮が求められます。

当院でのサポート

 

当院では、糖尿病患者さんの口腔の健康管理にも積極的に取り組んでいます。以下のようなサポート体制を整えています:

  • 医科歯科連携:近隣の信頼できる歯科医院と連携し、歯周病チェックと治療方針の共有を実施。

  • HbA1cと歯周病の関連評価:定期検査時に口腔の状況をヒアリングし、必要に応じて歯科紹介を行います。

  • 患者教育:糖尿病と歯周病の関連について、わかりやすい資料・動画での啓発を行っています。

糖尿病治療のゴールは、単なる数値改善だけではありません。歯周病対策を含めた全身の健康維持が、長期的な合併症予防とQOLの向上につながります。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

 

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