糖尿病患者における水虫の発生頻度とリスク

糖尿病患者では、足の血流障害や免疫機能の低下により皮膚感染症にかかりやすくなっており、その中でも特に足白癬(水虫)は頻度の高い感染症の一つです。
発生頻度の統計データ
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糖尿病患者における足白癬の有病率は、健常者の約2倍と報告されています(約30〜70%に及ぶ報告もあり)。
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参考文献:Ameen M. Epidemiology of superficial fungal infections. Clin Dermatol. 2010;28(2):197-201.
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日本の研究では、糖尿病外来患者のうち約40%が足白癬を持っていたとの報告もあります。
リスク因子
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血糖コントロール不良(HbA1c高値)
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末梢神経障害・血流障害
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足の清潔不良
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足の変形や外反母趾などによる密閉環境
水虫(白癬菌)とは何か?
水虫は白癬菌(皮膚糸状菌)によって引き起こされる感染症で、主に足趾間や足底、爪に症状が出ます。
種類
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趾間型:指の間がふやけて白くなり、かゆみやただれを伴う。
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小水疱型:足の裏に小さな水ぶくれができ、強いかゆみを伴うことも。
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角質増殖型:かかとや足底の角質が厚くなり、皮膚がガサガサになる。
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爪白癬:爪が白く濁り、厚くなって変形する。
糖尿病患者では、特に角質増殖型や爪白癬の割合が高いとされています。
糖尿病と水虫の関係 ─ なぜ悪化しやすいのか?
1. 血流低下と免疫力の低下
糖尿病では血管障害によって末梢の血流が悪くなり、皮膚のバリア機能や自己修復能力が低下します。
2. 感染の拡大リスク
水虫を放置すると、細菌感染(二次感染)を併発しやすくなり、蜂窩織炎や壊疽のリスクも増大します。
3. 神経障害
足にできた傷や感染に気づきにくく、受診や治療が遅れがちです。
4. 爪白癬からの広がり
爪白癬を介して周囲の皮膚へ再感染するループが形成されることがあります。
水虫の診断と治療 ─ 糖尿病患者における注意点

診断
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視診による判断の他、皮膚や爪からの角質検体を採取し、KOH法で顕微鏡検査。
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最近ではPCR検査も利用され、より高感度な診断が可能。
治療法
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外用薬:アゾール系・アリルアミン系抗真菌薬(1日1〜2回塗布)
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内服薬:爪白癬や広範囲の場合にはテルビナフィン、イトラコナゾールなどの内服療法が推奨されます。
治療期間
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足白癬(趾間型、小水疱型):約4〜6週間
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角質増殖型・爪白癬:3〜6カ月以上の長期治療が必要
注意点
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外用薬は「見えなくなっても継続」が原則。見た目の改善後も真菌は皮膚の奥に残る可能性があります。
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糖尿病患者では治癒が遅れる傾向があるため、定期的な通院と診察が重要です。
当院でのサポート

当院では糖尿病患者様の皮膚疾患に対しても、内科的視点と皮膚科連携による一貫したサポートを提供しています。
特徴的な取り組み:
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足チェックの実施:糖尿病患者の定期診察時に足の皮膚や爪を観察。
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糖尿病専門医による早期治療介入:水虫の疑いがある場合は即座に検査・診断へ。
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他科連携:難治性爪白癬は皮膚科と連携し、爪切除・内服加療の判断を行います。
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自己ケア指導:足の洗浄、保湿、靴下選びなども個別に指導します。
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治療継続のモチベーション支援:通院しやすい時間帯の設定や、LINEでの経過相談にも対応。
糖尿病の合併症の1つである皮膚感染症。小さな“水虫”と思わず、専門的な診断と治療を受けることが、将来の合併症予防につながります。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada) 医学博士(東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。