糖尿病患者さんにおける脱水症のリスクと対応

糖尿病と脱水症の関係とは?

糖尿病では、**血糖値の上昇が尿量の増加を引き起こす「浸透圧利尿」**につながり、脱水のリスクが高まります。特に高齢者や2型糖尿病患者では、のどの渇きを感じにくい・水分摂取が不十分になりやすいため、**無自覚の脱水(かくれ脱水)**も珍しくありません。

また、インスリン不足による高血糖(ケトアシドーシスなど)や、発熱・下痢・嘔吐といった急性症状が加わることで、重度の脱水から意識障害や腎不全を引き起こすこともあります。

脱水の症状と危険サイン

軽度〜中等度の脱水症状

  • 口の渇き、唇の乾燥

  • 倦怠感、頭痛、集中力低下

  • 尿の色が濃い(暗黄色)、尿量減少

  • 足がつる、頻繁な立ちくらみ

重度脱水のサイン

  • 意識混濁、立てない、反応鈍い

  • 血圧低下、頻脈、ショック

  • 尿がまったく出ない(乏尿・無尿)

  • 高齢者では「いつもと様子が違う」「急に寝たきり」などの症状で現れることも

高血糖による浸透圧利尿とその影響

浸透圧利尿とは?

血糖が180mg/dLを超えると、腎臓の再吸収を超えて糖が尿に排出されるようになり、水分も一緒に引き込まれる(浸透圧利尿)。

  • 血糖が250〜400mg/dLを超えると、尿量が1日3〜6Lになることも

  • その結果、水分・電解質(Na、K)・ミネラルの喪失

  • 脱水 → 腎血流低下 → 一過性腎機能障害や高血糖の悪化

発熱・下痢・嘔吐時の対応と注意点

糖尿病患者では、脱水による血糖上昇・ケトーシス悪化・意識障害のリスクが高いため、以下のような指導が重要です。

発熱・下痢・嘔吐の初期対応

  • 食事が摂れない時でも水分と糖分は摂取する(経口補水液・スポーツ飲料)

  • SGLT2阻害薬・利尿薬の使用中は一時中止を検討(医師に確認)

  • インスリン治療中の方はインスリンは自己判断で中止しない

医療機関への受診目安

  • 発熱が38度以上かつ持続

  • 嘔吐・下痢で水分がまったく摂れない

  • 血糖が300mg/dL以上で尿ケトン陽性

  • 意識がぼんやりする、尿が出ない

当院でのサポート

 

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、糖尿病患者の脱水予防・早期対応を重視しています。

1. 日常の予防アドバイス

  • こまめな水分補給(1日1.5〜2Lを目安)

  • 夏場や発熱時は、意識して飲む習慣づけを

  • 飲酒・カフェイン・塩分の過剰摂取に注意

2. 自宅でのセルフチェック支援

  • 血糖手帳と合わせて尿の色や尿回数の記録を推奨

  • **家庭血圧、体重変動(脱水で急激な体重減少)**も確認

3. 外来での初期評価と介入

  • BUN/Cr比やナトリウム値、浸透圧などの脱水マーカーの測定

  • 高齢者・SGLT2阻害薬使用中の方には個別の水分・薬剤管理指導

4. 感染症・発熱時の電話相談・緊急受診体制

  • LINEによる相談にて、早期対応を促進

  • 必要時は入院先の迅速紹介も行っています


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

 

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