変形性関節症(OA)とは?—加齢だけでなく“体重”が鍵になる

変形性関節症(OA:Osteoarthritis)は、関節軟骨の摩耗と変形により、痛みや運動制限を生じる慢性疾患です。高齢者に多いとされますが、肥満が大きなリスク因子であることが近年強調されています。
OAの好発部位
-
膝関節OA(膝痛):体重負荷の影響が直接的
-
股関節OA・腰椎変性疾患も関連
-
手指や指関節にも影響(非体重関節にも及ぶ可能性)
肥満との関連機序
-
関節への機械的負荷増大(膝では体重の約3〜6倍が歩行時にかかる)
-
脂肪細胞由来の炎症性サイトカイン(アディポカイン)が軟骨破壊を促進[1]
疫学データと研究から見るOAリスクの実態
代表的なエビデンス
-
Framingham OA Study:BMIが5単位増えるごとに、膝OAのリスクが35%増加[2]
-
Johnston County OA Project:肥満女性では膝OAの発症リスクが4倍超[3]
-
日本のNILS-LSA研究でも、BMIと膝痛・画像上のOAに有意な相関[4]
男性より女性でリスクが高い理由
-
女性ホルモンの変化(閉経後)と脂肪分布の変化が影響
-
筋力低下や膝内反変形(O脚)との関連
若年化の傾向
-
小児肥満や若年肥満者で、20〜30代から膝痛・OA所見を認める例が増加[5]
肥満と痛みの悪循環—動かない→太る→さらに悪化
慢性炎症と痛みの増強
-
内臓脂肪から放出されるIL-6、TNF-αが慢性関節炎症を維持
-
痛みにより活動量が低下し、サルコペニア肥満のリスクが高まる
精神面との相互作用
-
OA患者のうつ病・不安障害の併発率が高いことも報告
-
「痛みがあるから動けない」→「動かないから筋肉が減る」→「症状が進行」の悪循環
体重管理と関節保護—エビデンスに基づく予防と改善

減量の効果
-
体重5%の減少で膝OAの痛みと機能障害が30%改善[6]
-
体重10%以上の減量で炎症マーカー(CRP、IL-6)も有意に低下[7]
推奨される運動療法
-
水中運動やバイクなど関節負担の少ない有酸素運動
-
下肢筋トレ(大腿四頭筋)は膝OAの進行抑制に有効
栄養とサプリメント
-
ビタミンD、オメガ3脂肪酸、グルコサミン、コンドロイチンの有用性に一定の報告あり
-
抗酸化物質を多く含む食事(野菜・果物中心の地中海型食)も推奨
当院でのサポート

当院では、肥満による関節症・痛みの予防と改善を内科の立場から支援しています。
1. 関節痛の問診とスクリーニング
-
BMI測定・身体所見・**膝関節エコー・関節X線(連携施設)**による評価
-
痛みの性状・頻度・歩行能力の聞き取り
2. 体重コントロールと生活指導
-
専門医によるカロリーコントロールと抗炎症食指導
-
「痩せること」だけでなく「筋肉を保つ・動ける体」へ導く
3. 運動処方とリハビリ連携
-
医師が推奨する関節に優しい運動のメニュー化
-
東邦大学や近隣の整形外科と連携したリハビリ導入も検討