超悪玉コレステロール「Lp(a)」の測定が注目される理由について

Lp(a)とは?— LDLより厄介な“超悪玉”コレステロール

Lp(a)(リポプロテイン・エー)は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)と類似した構造を持つ脂質ですが、その構造にはアポリポプロテイン(a) という特有のタンパク質が付加されており、より強い動脈硬化促進作用を持ちます。

Lp(a)の特徴

  • LDLと類似の脂質構造+Apo(a)の組み合わせ

  • 動脈硬化、血栓形成、炎症を促進

  • 血中濃度は遺伝的に決定されやすく、生涯安定

通常の健診では測定されない

  • 健康診断や一般的な脂質検査ではLp(a)は含まれていない

  • 動脈硬化や冠動脈疾患のハイリスク層では追加測定が推奨される[1]

なぜ今、Lp(a)が注目されているのか?— ガイドラインと研究の変化

欧米ガイドラインの対応

  • ACC/AHA(米国心臓協会):冠動脈疾患の家族歴・若年発症例では測定を考慮[2]

  • ESC/EAS(欧州心臓病学会):すべての成人に一生に一度はLp(a)測定を推奨[3]

日本動脈硬化学会(JAS 2022)でも注記

  • 高リスク症例や家族性高コレステロール血症(FH)患者ではLp(a)測定の意義があると明記[4]

新規性・独自性

  • LDL-Cが正常でもLp(a)が高いことで動脈硬化が進行するケースが多く、"見えないリスク"として注目

  • 新しい治療ターゲットとして抗Lp(a)療法の開発が進行中

Lp(a)高値のリスクと治療抵抗性 — サイレントキラーの実態

数値とリスク

  • Lp(a)が50 mg/dL(約125 nmol/L)以上で心筋梗塞や脳卒中リスクが2倍以上に[5]

  • Lp(a)はスタチンではほとんど下がらない

家族性高コレステロール血症(FH)との重複

  • FH患者の約30〜40%でLp(a)高値が合併[6]

  • 心血管イベントの早期発症リスクが著しく増加

治療法の課題

  • 現時点では有効な薬剤は限定的(ニコチン酸系・PCSK9阻害薬でわずかに低下)

  • RNA干渉薬(ペラシラン、オレシラン)の臨床開発が進行中

早期発見・リスク層把握の重要性 — 測定するだけで変わる戦略

なぜスクリーニングが重要か?

  • LDL-Cが正常でも、Lp(a)高値により過小評価される症例が多い

  • 糖尿病、腎疾患、脳血管疾患を有する患者では多角的な脂質評価が必要

早期診断のメリット

  • 治療介入を強化(スタチン+エゼチミブ+PCSK9阻害薬など)

  • アスピリン投与や抗血小板薬の追加判断材料にも

  • 家族スクリーニングによる一次予防・二次予防の強化

安全性と検査負担

  • 血液検査1回で測定可能(空腹不要)

  • Lp(a)は遺伝的に安定なため、1回の測定で十分(再検査は原則不要)[7]

当院でのサポート

 

当院では、冠動脈疾患や脳卒中の予防を目的に、Lp(a)の測定と包括的な脂質評価を行っています。

1. 対象となる患者

  • LDL-Cが正常でも動脈硬化・冠動脈疾患の家族歴がある方

  • FH(家族性高コレステロール血症)と診断された方

  • 糖尿病、CKD、甲状腺疾患を有し、追加リスクが懸念される方

2. 検査と診断体制

  • Lp(a)測定は通常の血液検査に追加で可能

  • 結果は数日で判明。値が高い場合は詳細評価と治療方針を設計

3. 治療・予防の実践

  • スタチン+エゼチミブ+PCSK9阻害薬による包括的脂質管理

  • 専門医による食事指導と生活習慣改善サポート

  • 家族歴をもとにしたスクリーニングと早期介入の徹底


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。


引用文献

[1] 日本動脈硬化学会. 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版.
[2] Grundy SM, et al. 2018 AHA/ACC guideline. Circulation. 2019;139(25):e1082–e1143.
[3] Mach F, et al. Eur Heart J. 2020;41(1):111–188.
[4] Teramoto T, et al. J Atheroscler Thromb. 2022;29(5):570–592.
[5] Tsimikas S, et al. J Am Coll Cardiol. 2018;71(3):312–313.
[6] Nordestgaard BG, et al. Eur Heart J. 2010;31(23):2844–2853.
[7] Clarke R, et al. N Engl J Med. 2009;361(26):2518–2528.

 

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