高尿酸血症と糖尿病:インスリン抵抗性がつなぐ共通経路

高尿酸血症と糖尿病 ― 概要と関連性

1-1. 高尿酸血症とは

高尿酸血症は、血清尿酸値が7.0 mg/dL以上の状態を指します。痛風や腎結石の原因となるだけでなく、心血管疾患や糖尿病とも関連することが近年明らかになっています。

1-2. 糖尿病と高尿酸血症の合併率

  • 日本人男性の約**25〜30%**が高尿酸血症を有すると報告【1】

  • 2型糖尿病患者では30〜40%が高尿酸血症を合併【2】

  • 高尿酸血症患者は糖尿病発症リスクが1.5〜2倍に上昇するとの報告【3】

1-3. なぜ関係するのか?

その鍵となるのが 「インスリン抵抗性」
糖尿病と高尿酸血症は、互いに独立した疾患ではなく、同じ代謝異常の背景を共有する兄弟のような存在なのです。

インスリン抵抗性が生む共通経路

2-1. インスリン抵抗性とは

インスリン抵抗性とは、体内でインスリンが十分に分泌されても、筋肉・脂肪・肝臓などがその作用に反応しにくくなる状態です。

2-2. 高尿酸血症への影響

  • インスリンは腎臓の尿酸排泄を促す働きを持つ

  • 抵抗性があると腎尿細管での尿酸排泄が低下

  • 結果として高尿酸血症が進行

2-3. 糖尿病への影響

  • インスリン抵抗性は2型糖尿病の主要因

  • 脂肪肝、肥満、高血圧を併発しやすい

  • メタボリックシンドロームと強固にリンク

2-4. 共通経路のイメージ

「インスリン抵抗性」 → 「尿酸排泄低下」+「高血糖・高インスリン血症」 → 「高尿酸血症と糖尿病の併発」

最新研究とガイドラインの知見

3-1. 疫学研究

  • Framingham Heart Study:尿酸高値は糖尿病発症リスクを2倍に増加【4】

  • 日本人コホート研究(Hisayama Study):尿酸値上昇と2型糖尿病発症が独立して関連【5】

3-2. 学会ガイドライン

  • 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン(2023):高尿酸血症は生活習慣病のハイリスク群と明記

  • 日本糖尿病学会(2023):尿酸高値が糖尿病の合併症進展に寄与する可能性を指摘

3-3. 新規性

  • SGLT2阻害薬は血糖降下だけでなく、尿酸を0.6〜1.0 mg/dL低下させる効果があることが明らかに【6】

  • 尿酸をターゲットとした治療が糖尿病管理に寄与する可能性が注目されている

安全性と治療の実際

4-1. 食事・生活習慣

  • プリン体制限だけでなく、**果糖制限(清涼飲料・菓子類)**が重要

  • 減量により尿酸値・血糖値ともに改善

  • アルコール(特にビール・日本酒)は控える

4-2. 薬物療法

  • 高尿酸血症:アロプリノール、フェブキソスタットなど尿酸生成抑制薬

  • 糖尿病:インスリン抵抗性改善薬(メトホルミン)、SGLT2阻害薬など

  • 両者を併発する患者に対しては、腎機能や薬物相互作用を考慮した総合的判断が必要

4-3. 早期診断の意義

  • 尿酸値7.0 mg/dL以上が続く場合、糖尿病発症リスクは健常者の約1.7倍

  • 早期から介入することで、糖尿病・心血管疾患・腎障害を予防可能

当院でのサポート

 

5-1. 包括的な検査

  • 血糖・HbA1c・尿酸値を同時に測定

  • 腎機能・肝機能・脂質プロファイルも評価し、代謝全体を俯瞰

5-2. 糖尿病専門医による治療戦略

  • 尿酸降下薬と糖尿病薬の最適な組み合わせを選択

  • インスリン抵抗性改善を軸とした治療を重視

5-3. 個別生活指導

  • 糖尿病専門医が主体となり、食習慣・間食・飲酒のコントロールを具体的に提案

  • 生活リズム・睡眠の調整も含めてトータルに支援

5-4. 継続的フォロー

  • 定期検査で尿酸値・血糖値の推移を確認

  • 合併症リスクを長期的にモニタリングし、治療を柔軟に調整


まとめ

高尿酸血症と糖尿病は一見別々の病気のように思われますが、その背景にはインスリン抵抗性という共通の病態があります。
早期診断・適切な介入により、糖尿病や心腎合併症の予防が可能です。

当院では、糖尿病と高尿酸血症を総合的に診療し、患者様一人ひとりに最適な治療を提供しています。


参考文献

  1. 日本痛風・尿酸核酸学会ガイドライン2023.

  2. 日本糖尿病学会. 糖尿病治療ガイド2023.

  3. Choi HK, et al. Uric acid and risk of type 2 diabetes. Diabetes Care. 2008.

  4. Bhole V, et al. Serum uric acid and the risk of diabetes in the Framingham Heart Study. Diabetes Care. 2010.

  5. Kodama S, et al. Association between serum uric acid and risk of diabetes: Hisayama Study. J Epidemiol. 2012.

  6. List JF, et al. SGLT2 inhibitors reduce serum uric acid. Diabetes Obes Metab. 2012.


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

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