高齢者糖尿病の現状と背景

高齢化が進む日本では、糖尿病患者の半数以上が65歳以上を占めています。高齢者では、糖尿病の進行だけでなく、認知症、転倒、低栄養、サルコペニア(筋肉量の減少)などのリスクが加わるため、若年者とは異なる視点での血糖管理が求められます。
2016年に発表された日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同提言では、高齢者の生活機能や認知機能、併存疾患の有無に応じた血糖管理の目標が明示されました(日本糖尿病学会・日本老年医学会合同委員会, 2016)。
高齢者における血糖管理目標の分類と具体例
高齢者の血糖管理は大きく3つの群に分けて考えます。
グループ1:健常または軽度の認知機能低下のみ
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HbA1c目標値:7.0%未満(低血糖リスクが低い場合)
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目標範囲:6.0%〜7.0%
グループ2:中等度の認知機能低下、または日常生活に一部介助が必要な人
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HbA1c目標値:7.5%未満
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目標範囲:7.0%〜8.0%
グループ3:高度の認知症、または日常生活全般に介助が必要
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HbA1c目標値:8.0%未満
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目標範囲:7.5%〜8.5%
これらの目標値は、個々の患者の生活背景や治療リスクを加味して柔軟に設定されるべきです。
最新のエビデンスとガイドラインのアップデート
近年の研究では、過度な血糖管理が高齢者における低血糖リスクや死亡率上昇に関連することが指摘されています(Laiteerapong et al., JAMA, 2017)。
2023年に改訂された米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインでも、高齢者の治療目標は"個別化"がキーワードであり、以下の点が強調されています:
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合併症よりもQOL(生活の質)重視
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転倒や低血糖による入院リスク回避
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認知機能低下の進行抑制
新規性と当院独自の取り組み

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、次のような独自性ある取り組みを行っています:
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高齢者専用の生活評価ツールの導入:活動量、認知機能、低栄養リスクを毎回チェック
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持効型インスリン+DPP-4阻害薬など、低血糖リスクの少ない治療法を優先
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CGM(持続血糖モニター)やフリースタイルリブレ導入による夜間低血糖の可視化
数値データの例:
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80歳以上の糖尿病患者の約20〜30%が低血糖を経験(Korytkowski M. Diabetes Care. 2020)
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低血糖による入院率は、血糖コントロールが厳格すぎる群で2倍以上(UKPDS follow-up study)
当院でのサポート

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、高齢の糖尿病患者様に対し、以下のようなサポートを行っております。
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多職種連携:医師、看護師、管理栄養士、薬剤師によるチーム医療
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診療時間の柔軟対応:介護付き通院の方への対応も可能
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オンライン相談やご家族との情報共有:介護者や家族への説明も丁寧に対応
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地域包括ケアとの連携:訪問看護・在宅診療の併用も相談可
高齢者糖尿病では「完璧な血糖値」ではなく、「安心して生活できる毎日」を重視しています。ご本人だけでなく、ご家族やケアスタッフとともに、最善の治療計画を作成いたします。
監修者プロフィール
院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士 (東京大学)
山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。
資格・専門性
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日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医
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日本内科学会 総合内科専門医
豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。