食事療法と運動療法

糖尿病の治療法

糖尿病の治療にあたっては食事療法と運動療法が非常に大切です。食事療法と運動療法は無理のない範囲で継続的に取り組むべきものですので、日々の生活習慣やご希望に応じたやり方を選択しましょう。
当院では、糖尿病専門医の適切な指導の下で、食事の喜びと健やかな生活のいずれも損なわないようにサポートさせて頂きますので、ぜひ一度ご相談ください。

食事療法とは

食事療法のポイント


食事療法のポイント食事制限は合わない方もいらっしゃいます。1日の活動に不可欠な栄養をしっかり摂取することが大切ですので、実質的には制限に該当しないものです。
肥満解消のためダイエットをしている方はエネルギー摂取の抑制が必要となりますが、必要最低限のエネルギーは摂取することが望ましく、エネルギー制限は不要と考えています。

1.適正なエネルギー量の食事を意識する

1日のエネルギー必要量は、年齢、性別、身長、体重、ライフスタイル、仕事(力仕事、デスクワーク)などに応じて異なります。
必要十分なエネルギーを摂取できるような食生活を意識しましょう。食事量は腹八分目で留め、お腹いっぱいまで食べることは控えましょう。1日のエネルギー必要量は以下の計算式で導き出すことができます。

エネルギー摂取量(kcal)=身体活動量(kcal)×標準体重(kg)
※標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

加齢に伴って基礎代謝量は減少するため、30歳を超えてからは10歳年を取るごとに、上記計算式で導き出されたエネルギー摂取量から男性は60kcal、女性は40kcalを引くとより実情に即した目標値に近づくとされます。

2.規則正しい食事を意識する

食後の血糖値上昇は避けられません。特に、食事時間やタイミングがバラバラな方や1回の食事でまとめようとする方は、血糖値上昇が乱れてしまい膵臓への負担が大きくなります。糖尿病の悪化防止のために、なるべく決まった時間に適切な時間間隔(4~6時間程度)を空けて食事をするようにしましょう。
また、早食いはせずにゆっくりよく噛んで食べましょう。早食いによって糖尿病や肥満のリスクが高まりますので、激しい血糖値上昇を避けるためによく噛んでゆっくり食べることが大切となります。

3.栄養バランスに気をつける

主食・主菜・副菜を、栄養バランスを意識して摂取しましょう。 糖尿病治療における食事療法は、糖質・脂質をコントロールすることが大切です。いつもの食事において三大栄養素を摂取する理想的な割合は、炭水化物50〜60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜25%と言われていますが、近年では糖質の割合を減らした方が良いという見解も出てきています。様それぞれの趣向も考慮に入れて、適切に食事内容を調整することが重要となります。
しかし、糖尿病の薬物療法を受けている方が急に炭水化物・糖質をコントロールすると、低血糖に陥るリスクがあります。食事内容については医師の指導の下で決めるようにしてください。
また、何から食べるかによって食後の血糖値は左右されます。野菜、キノコ、海藻など食物繊維が豊富に含まれていてすぐに消化できない食品や、たんぱく質が豊富に含まれる食品から食べるようにし、パン、コメ、麺類などの血糖値の上昇を招きやすい食品は最後に回すことで、食後の急激な血糖値上昇を防ぐことができます。

運動療法とは

運動療法とは食事療法でバランスよく必要なエネルギー量を摂取し、運動療法ではエネルギー消費を心がけましょう。運動で筋肉量が増えると、インスリンが機能しやすくなります。 運動をする前に日々の生活を思い出してみましょう。現代社会は便利になった一方で、エレベーター、エスカレーター、自動車での移動などの普及で運動するタイミングが非常に少なくなりました。
大前提として、運動をしないと体力をキープできないという現状を問題視すべきです。便利な世の中になった一方で、糖尿病などの生活習慣病や肥満気味の方が増加傾向にあります。このような事態を真摯に受け止め、運動のモチベーションとすることが自然な動機付けと言えるでしょう。
便利な手段に頼りきらず、誰からも強いられることなく運動を継続的に行うことを意識しましょう。

運動のメリット

運動でエネルギーを積極的に消費することによって、内臓脂肪や肥満体質を改善するだけでなく、たんぱく質を適量摂取することで筋肉量の増強も期待できます。筋肉量が増えると、インスリンが機能しやすくなります。 1型糖尿病・2型糖尿病いずれも、筋力増強とストレス解消を目的とした運動が効果的と言えます。

運動療法の効果

運動療法を行う意義は大きく、以下のような効果が期待できます。

  • 血中のブドウ糖を筋肉で吸収しやすくなる、ブドウ糖や脂肪酸が積極的に消費されることで血糖値が抑制される
  • (2型の場合)筋量が増えるとインスリンが機能しやすくなる
  • エネルギーの需要と供給のバランスが整い、肥満解消が期待できる
  • 脂質異常症(高脂血症)や高血圧といった他の生活習慣病の改善にも繋がる
  • 血液が循環しやすくなる
  • 末梢血管が強化され、心肺機能が向上する
  • 骨の強度が増し、骨粗鬆症を予防できる
  • 体力、筋力の増強・保持が期待できる
  • 運動によるスッキリした感覚で、ストレス解消が期待できる

どんな運動をすればいいのか

有酸素運動とレジスタンス運動が有効となります。有酸素運動とは、水泳、ウォーキング、ジョギングなどの全身運動を指します。レジスタンス運動とは、俗に言う筋トレを指し、筋肉へ負荷をかけてトレーニングするものです。 有酸素運動によって筋肉への血流が増加し、筋肉がブドウ糖を吸収しやすくなり、インスリンが機能しやすくなります。
また、筋トレで筋肉量が増加すると、インスリンの分泌効果が上昇します。 運動の効果は2日間程度しか持続しないため、根気強く毎日続けることが大切です。最初は有酸素運動を中心に習慣化することを目指しましょう。
運動をあまりしてこなかった方は、毎日散歩することから取り組んでみましょう。

どのくらいの運動量が必要か

1日の理想的な消費エネルギーは160〜240kcalとされています。歩数換算すると、1万歩程度の計算です。散歩に慣れていない方にとって1万歩の散歩はハードルが高いかと思います。したがって、最初のうちは15〜30分程度の散歩を1日2回行うことからスタートすると良いでしょう。また、毎日続けるよりは週3日以上を目安に継続していくのが良いでしょう。 通学、通勤、買い物などで意識的に歩いて移動することがお勧めです。
習慣化は言葉にするのは容易ですが、いざ実践しようとするとなかなか骨の折れる作業です。したがって、ポジティブな気持ちで生活習慣の一部として継続できるようにやり方を検討してみましょう。

運動療法の原則

  • 準備運動と整理運動を忘れないようにしましょう
  • まずは軽めの運動からスタートし、徐々に運動量を増やすことを意識しましょう
  • その日の体調も考慮して、適切な運動量を考えましょう
  • 無茶はせずにポジティブな気持ちで運動するようにしましょう
  • 毎日は難しくても、運動前後に血糖値や尿糖の測定を実施しましょう

※以下に該当する場合、病状を悪化させるリスクがありますので、運動療法の禁止もしくは制限が必要です。

  • 急性感染症
  • 糖尿病壊疽
  • 高度の糖尿病自律神経障害
  • 糖尿病の管理状態が著しく悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dl, 尿ケトン体中等度以上陽性)
  • 増殖網膜症によって直近で眼底出血が起こっている場合(眼科医と相談する)
  • 虚血性心疾患や心肺機能に異常がある場合(各専門医の意見を求める)
  • 骨、関節の疾患を患っている場合(専門医の意見を求める)
  • 腎不全を起こしている場合(血清クレアチニンが男性2.5、女性2.0mg/dl以上)
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