発熱と甲状腺はどう関係しているの?

「熱が出る=風邪やインフルエンザ」と思われる方が多いのですが、実は甲状腺の病気が原因で発熱することも少なくありません。甲状腺は喉の前側にある小さな臓器で、「体のエンジン」をコントロールする甲状腺ホルモンを作っています。このホルモンは全身の代謝や体温の調節に深く関わっているため、バランスが崩れると微熱が長く続く、あるいは高熱が急に出るといった症状が出ることがあります。
発熱が甲状腺からくるときの特徴
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微熱が何週間も続く
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発熱に加えて動悸、息切れ、汗が止まらない
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首の前側に腫れや痛みを感じる
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熱が下がったり上がったりを繰り返す
こうした症状は、風邪や感染症ではなく、甲状腺機能亢進症や亜急性甲状腺炎といった病気の可能性があります。感染症と似た症状のため、見逃されやすいのが注意点です。
関連ページ:
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)について
亜急性甲状腺炎の症状と治療
甲状腺の働きと体温の関係
甲状腺は甲状腺ホルモン(T4、T3)を分泌しており、このホルモンは全身の細胞の「代謝スイッチ」を入れる役割を担っています。代謝が高まると体は多くの熱を産生し、代謝が落ちると熱が作られにくくなります。つまり、甲状腺の働きが乱れると体温調節がうまくいかなくなるのです。
ホルモンが多すぎる場合(甲状腺機能亢進症)
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基礎代謝が高まり、平熱が37℃前後になる
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微熱や高熱が出やすくなる
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暑がり、多汗、動悸、体重減少
ホルモンが少なすぎる場合(甲状腺機能低下症)
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代謝が下がり、平熱が低くなる
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寒がりや手足の冷えが強くなる
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重度では低体温や免疫低下も
関連ページ:
甲状腺機能低下症(橋本病)について
発熱を起こしやすい甲状腺の病気
発熱を伴いやすい代表的な甲状腺疾患を解説します。
3-1. 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
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微熱が長期間続くことが多い
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動悸、息切れ、手の震え、体重減少を伴う
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検査ではTSH低値、FT4高値が特徴
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放置すると甲状腺クリーゼという命に関わる状態に進行することも
3-2. 亜急性甲状腺炎
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高熱(38〜39℃)と強い首の痛みが特徴
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痛みが耳や顎に広がることも
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ウイルス感染後に発症することが多い
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数週間で自然軽快することもあるが、炎症が強い場合はステロイド治療が必要
3-3. 破壊性甲状腺炎(橋本病急性増悪など)
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微熱〜中等度の発熱
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痛みは少なく、倦怠感が主体
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数週間〜数ヶ月で甲状腺機能低下症に移行することがある
3-4. 甲状腺悪性腫瘍の一部
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未分化癌や悪性リンパ腫では発熱が出る場合がある
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首のしこりと発熱が同時にある場合は精密検査が必要
関連ページ:
甲状腺のしこり・腫れについて
こんなときは早めに受診を

甲状腺が原因の発熱は、早期発見・早期治療が重要です。特に次のような場合は放置せずに受診してください。
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38℃以上の発熱が数日以上続く
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微熱が2週間以上続く
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発熱に加えて動悸や体重減少がある
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首の腫れや痛み、飲み込みにくさを感じる
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発熱とともに大量の汗や息切れがある
これらは甲状腺ホルモン異常や甲状腺炎のサインである可能性があります。血液検査(TSH、FT4、FT3)や甲状腺エコー検査で原因を明らかにしましょう。
当院でのサポート

蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニックでは、発熱の原因が感染症なのか甲状腺疾患なのかを見極めるため、以下の検査と対応を行っています。
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甲状腺ホルモン測定(TSH、FT4、FT3)
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甲状腺エコー(形態評価、炎症や腫瘤の確認)
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炎症反応(CRP)や血算による感染症評価
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必要に応じた内分泌内科的治療(薬物療法、ステロイドなど)
検査結果は即日お伝えできるほか、後日LINEで送付も可能です。患者さんの生活に合わせて治療方針を柔軟に調整し、甲状腺機能亢進症や亜急性甲状腺炎などの治療を行っています。
院長プロフィール
山田朋英 医師
蒲田駅前やまだ内科糖尿病・甲状腺クリニック院長
医学博士(東京大学)/日本糖尿病学会認定専門医/アメリカ甲状腺学会会員
糖尿病・甲状腺疾患の国際共同研究に多数参画し、論文・学会発表も多数。