高齢者の糖尿病

高齢者の糖尿病とは

高齢者人口は増加の一途を辿っており、加齢に伴って膵臓の働きが弱まるため、糖尿病のお客様における高齢者の比率も上昇傾向にあります。 男性で糖尿病の発症リスクが高い方は、50代で約1%、60代で12〜13%、70代以上で18〜19%となっています。
一方で、女性では、50代で9〜10%、60代で15%ほど、70代以上で20%となっています。

高齢者糖尿病の特徴

65歳以上で発症する糖尿病を高齢者糖尿病と呼びます。加齢に伴って膵β細胞が減少するため、インスリンの分泌量も比例して減少します。
そして、筋肉量の減少、筋肉質の低下、内臓脂肪量の増加、運動量の低下などによって、ブドウ糖を消費する能力が大きく下がることで糖尿病の発症リスクが高まります。 若年層の糖尿病とは症状、併存疾患、起こり得る合併症に違いがあり、認知機能、身体機能、社会・経済状況なども個人差がありますので、血糖を適切に管理することが難しくなります。
また、加齢に伴って身体の変調に対する対応能力が下がりますので、安全面にも注意した上で血糖を管理する必要があります。

食後高血糖

食後高血糖加齢に伴うインスリン分泌量の低下のみならず、インスリンが働きかける筋肉量の減少と燃焼効率の悪化によって、食後の血糖値が高くなります。
なお、空腹時や夜間においては、腎機能の低下や肝臓の糖新生の低下によって、血糖値が低くなる傾向にあります。 また、高齢者は血糖値が高くなっても多尿やのどの渇きといった症状に気づくことが難しく、自覚せずに高血糖が進行する恐れがあります。脱水状態に陥ると、血液の濃度が上がり粘調度が増加し、また、動脈硬化の進行による血管閉塞といった循環障害が発生するリスクも高い状態となります。

低血糖

低血糖高齢者は低血糖に陥る確率が高く、発汗、冷や汗、動悸、手の震えといった低血糖に特徴的な症状が現れることが稀であり、低血糖に気づくことが難しくなります。低血糖発作が一度でも起こると、脳血管障害、慢性硬膜下血腫、不整脈、狭心症・心筋梗塞、転倒による骨折、突然死といったリスクが上昇します。
意識喪失など自己回復が難しい重度の低血糖状態に一度でも陥ると、脳に重度の障害が残り認知症の発症リスクも高まります。したがって、高齢の糖尿病お客様については、高血糖よりも低血糖の方が重篤な状態に陥るリスクが高いことから、低血糖とならないように適切な血糖管理を行う必要があります。

認知機能低下・認知症

認知機能低下・認知症糖尿病を発症すると、アルツハイマー型認知症の発症リスクが1.5〜2倍、血管型認知症の発症リスクが2〜3倍と高い状態となります。また、認知症の前段階である軽度認知機能障害についても発症リスクが高い状態であり、学習能力、記憶力、注意力、遂行機能などに障害が発生する恐れがあります。
遂行機能に障害が発生すると、健康面の自己管理が困難となり、糖尿病の治療ハードルの上昇と悪化に繋がる恐れがあります。

うつ(うつ病、うつ傾向)

うつ(うつ病、うつ傾向)うつ病(もしくはうつ傾向)になるリスクが上昇します。なお、先にうつ病になっても糖尿病の発症リスクが上昇すると考えられています。
糖尿病治療においては、運動療法や食事制限、服薬管理、インスリン治療など、しっかりとした自己管理が必要となります。自己管理によってストレスを感じてしまい。うつ病の発症へとつながることもあります。また、うつ病になると自己管理が困難となるため、さらなる糖尿病の悪化へとつながる恐れもあります。
体重減少、不眠、物事への興味・関心の低下、倦怠感などの症状がある場合は、うつ病を合併している疑いが強まりますので、注意が必要です。

身体機能の低下、骨折・転倒、サルコペニア、フレイル

身体機能の低下、骨折・転倒、サルコペニア、フレイル高齢者が糖尿病を発症すると、筋力低下や筋肉量の減少によって身体能力が下がり、ADL(日常生活動作)低下、骨折、転倒、フレイル、サルコペニアのリスクが上昇します。そして、こういった事象が糖尿病の悪化を招く悪循環に陥ります。

腎機能・肝機能障害

腎機能・肝機能障害腎臓や肝臓の機能は年齢を重ねるにつれて低下する傾向にあります。そして、糖尿病の合併症として知られる腎症は特に腎機能の低下を招く原因となりかねません。
糖尿病お客様の腎機能が低下すると、腎臓からのお薬の排出スピードが落ちてしまい、お薬が体内に残りやすくなり、副作用の発現リスクが高まります。

個人差が大きい合併症

個人差が大きい合併症高齢者が糖尿病を発症すると、フレイル、サルコペニア、心不全、がん、骨折、転倒などのリスクが高い状態となります。

多くの薬の併用

多くの薬の併用高齢者の糖尿病は合併症の併発リスクも高い状態であり、お薬の種類や服用量も増える傾向にあります。多量のお薬の服用を続けると、転倒、高血糖、低血糖のリスクが上昇します。

社会・経済状況

社会・経済状況高齢者の社会・経済状況の悪化に伴い、糖尿病治療のハードルも上がる傾向にあります。特に、ご家族がおらず単身で生活されている認知症を持つお客様は、介助者のサポートなしに治療を継続することは非常に困難です。

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