SPIDDM(緩徐進行1型糖尿病)について

SPIDDMとは?定義と特徴

SPIDDM(Slowly Progressive Insulin-Dependent Diabetes Mellitus)は、日本語で「緩徐進行1型糖尿病」と呼ばれる特殊なタイプの1型糖尿病です。発症初期は2型糖尿病と類似した経過をたどるものの、数年のうちにインスリン分泌能が低下し、インスリン治療が必要となる病態です。

特徴:

  • 成人に多い(40代以降)

  • 初期には生活習慣病のような経過

  • 糖尿病合併症リスクが高い

  • 抗GAD抗体などの自己抗体が陽性

診断基準とガイドラインによる位置付け

日本糖尿病学会による定義(2023年改訂)では、SPIDDMの診断には以下のような項目が考慮されます:

  1. 発症当初、インスリン非依存状態(経口薬での管理)

  2. 数年内にインスリン依存状態へ移行

  3. 自己抗体(抗GAD抗体など)が陽性

  4. インスリン分泌能の進行的低下(CPR低下)

ガイドライン:

  • 日本糖尿病学会(2023):「成人発症の1型糖尿病としてSPIDDMを念頭に置き、定期的な抗体測定とCPR評価を推奨」

  • ADA(米国糖尿病学会):"Latent Autoimmune Diabetes in Adults (LADA)"として分類されることもあり、SPIDDMと近い概念。

SPIDDMの発症機序と病態生理

SPIDDMは自己免疫性機序が関与しており、膵臓のランゲルハンス島β細胞に対する自己抗体が持続的に作用します。その結果、インスリン分泌機能が徐々に障害されていきます。

主な抗体:

  • 抗GAD抗体(最も感度が高い)

  • 抗IA-2抗体

  • ZnT8抗体(最近の研究で注目)

数字で見る:

  • 抗GAD抗体陽性率:SPIDDM患者の約70〜90%(日本糖尿病学会報告 2023)

  • 発症からインスリン依存化までの平均期間:約3〜5年

治療戦略と安全性

SPIDDMの治療の柱は、早期診断と進行抑制、そして適切なインスリン導入です。2型糖尿病と異なり、単なる生活習慣の是正や経口薬ではコントロール困難なケースが多く見られます。

治療のステップ:

  1. 抗GAD抗体陽性であればSPIDDMを疑い、経過観察強化

  2. Cペプチド(CPR)の低下が認められれば、インスリン導入を検討

  3. DPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬など、一部の薬剤が効果的なケースも報告あり

安全性の観点:

  • インスリン導入による低血糖リスクへの注意が必要

  • 自己抗体陽性であれば、他の自己免疫疾患(橋本病、バセドウ病など)との関連も考慮

当院でのサポート

 

当院では、SPIDDMに対して以下のような体制でサポートしています:

1. 迅速な診断体制

  • 抗GAD抗体・IA-2抗体・ZnT8抗体などの検査を実施

  • Cペプチド測定で膵機能を評価

2. 個別化された治療計画

  • 必要に応じた早期インスリン導入

  • 他の自己免疫疾患との合併確認(甲状腺疾患など)

  • 栄養・運動・薬物療法を一体化した包括的ケア

3. 精神的・社会的サポート

  • インスリン導入の心理的抵抗感に対する説明と支援

  • 社会生活への影響に配慮した就労支援

4. 合併症の予防と早期発見

  • 眼底検査、腎機能検査、神経検査の定期実施

SPIDDMは“見逃されやすい1型糖尿病”とも言われます。当院では、専門医の視点から早期診断・適切治療を行い、患者様の生活の質を守るお手伝いをいたします。


監修者プロフィール

院長 山田 朋英 (Tomohide Yamada)
医学博士(東京大学)

山田院長は、糖尿病・甲状腺・内分泌内科の専門医であり、東京大学で医学博士号を取得しています。東大病院での指導医としての経験や、マンチェスター大学、キングスカレッジロンドンでの客員教授としての国際的な研究経験を持ち、20年間の専門の経験を活かし生まれ故郷の蒲田でクリニックを開院しました。

資格・専門性

  • 日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医・研修指導医

  • 日本内科学会 総合内科専門医

豊富な臨床と研究の経験を活かし、糖尿病や甲状腺疾患における最新の治療を提供しています。

 

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